51:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:28:37.72 ID:n4MKx+790
今アイドルになりたくて、そしてトップを目指す気概があるならシンデレラ城の門を叩け。
オーディションで出番が回ってくる前に、私と同じ候補生だった子たちの誰かが、誰の受け売りなのかは知らないけれど、どうにも有名になっているらしいそんな、格言めいたことを呟いて、闘志を燃やしていたことを思い出す。
初めに言い出したその子もどうやら合格したみたいで、今は結構やり手のプロデューサーがついたりして、期待されているとは聞いたのだけれど――まあ、私にはあまり関係のない話だ。
とはいえ、いつだって華やかなのはカメラが映し出すピラミッドの天辺だけだ。
プロジェクト・シンデレラガールズに所属することはただの始まりでしかない。
身内で競い合うことを前提にしている以上、プロジェクトの上の方にいるアイドルのバックダンサーや前座をやれるチャンスがあったりと、確かにそこらの事務所よりは豪華といえるかもしれないけれど、誰もが頭の中に思い描くような華々しいデビューを迎えられるわけじゃない。
実際、今私が臨もうとしている、キャパが二十人あるかどうかも怪しい複合商業施設の広場を会場にしたミニライブだって必死に、新人枠の中で開催されたオーディションを勝ち抜いて、この手に掴んだものだ。
「準備はいいか?」
用意された衣装に身を包んで、ステージに登ろうとしている私に、プロデューサーは不敵な笑みを崩さないままそう問いかける。
この人の中にどんな期待があって、あれだけ失敗した私を拾ってくれたのかはわからない。
それでも、今もきっと何かを期待しているのだろう。だったら、それに応えるのが恩返しのはずだ。
「はい、大丈夫です」
「緊張してるな。まあ、無理もないさ。気楽にとは言わないけど、肩の力ぐらいは抜いておけよ」
でないと、またすっ転ぶぞ。
プロデューサーは豪快に笑いながらそんな冗談を飛ばしてきたけど、正直こっちとしては笑い事じゃない。
初めてのオーディションでもすっ転んで、初めてのライブでもすっ転んだアイドルなんて前代未聞だし、それでイメージがつくにしたって、転倒系アイドルなんていくらなんでも縁起が悪すぎる。
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