50:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:27:18.49 ID:n4MKx+790
それでも、ただ一人、派手にすっ転んだ私を見て爆笑していた人――その後、私を担当することになるプロデューサーだけは違っていたみたいだった。
一応自己弁護するなら、アピールタイムに歌だけはちゃんと歌いきった。課題曲の「お願い! シンデレラ」。何度もカラオケに通って、百点を安定してたたき出せるまで練習した曲だ。
でも、それが何の足しになるんだというレベルで無様な姿をさらしてしまったのだから、もしかして落選の通知すら送られてこないんじゃないかと、合否通知が来る前の日は一日中、布団を被って震えていたことを覚えている。
それなのに、何がどう転んで、どこでどう噛み合ったのか知らないけれど、私の元に贈られてきたのは、合格通知だった。
胃がひっくり返るかと思った。皆が総出で私を騙そうとしてるんじゃないかと、そうじゃなければ夢を見てるんじゃないかと何度もほっぺたを引っ張ったり、手紙の文章とにらめっこしてみたり、果ては採用担当に電話をかけてみたりしたけれど、どうやら奇跡というのは本当にあるらしい。
私は、間違いなく合格していた。採用担当の人もどこか呆れながらも、嘘じゃないよ、と、何度も念を押すように言ってくれたけどあの人には相当迷惑をかけたんじゃないかと、思い返す度に顔が真っ赤になる。
それはともかく。
プロジェクト・シンデレラガールズはそれ自体がトップアイドルの登竜門と呼べるぐらいに有名なものだ。大資本が経営しているからというのもあるけれど、何よりも。
神崎蘭子。渋谷凛。塩見周子。島村卯月。高垣楓。安部菜々。本田未央。北条加蓮――指折り数える歴代のシンデレラガールには、アイドルに興味がないと公言してはばからない人だってきっと知っている、錚々たる名前がいくつも並んでいる。
そして、その一番初めに十時愛梨の名前がある。それがその証明だった。
例えシンデレラガールに選ばれていなくても、アイドルアワードを受賞し、トップアイドルと呼ばれる存在を数多く輩出してきたプロジェクトなのだから、今なお戦国時代が続いているこの業界だ。有名にならない理由がない。
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