55:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/18(木) 18:32:47.49 ID:n4MKx+790
「未熟者かもしれません、だけど、小さい頃に歌が嫌いになりそうだった私を助けてくれた人に感謝を込めて、全力で歌います!」
恋は一種類だけだけど、愛にはいくつもの種類があるんだぜ、なんて歌っていたのはどこの誰だろう。緊張している今じゃなくたって、思い出せないけれど。
今この瞬間、私にしかないものを歌いたい。だけど、ふとしたときに湧き起こってくるものじゃなくて、ずっとずっと、抱え続けて生きてきたもののことを。
小さく息を吸い込んで、いち、にい、さん。
私は歌う。あの日、素敵な魔女から貰った魔法のことを。それから生きていく中で、歴史の中に突き立てられて、途方もないぐらい遠くで今もはためき続けている旗を目指す旅路の始まりを。
そして、その始まりをくれたあのひとへの、十年以上ずっと胸の内側で押さえつけられて、外に出たがっていたありったけの想いを、今ここで歌うのだ。
「――それが、愛でしょう!」
世界がそれをなんて呼ぶのかはわからない。もしかしたらもっと違う何かなのかもしれない。だけど。
愛情。友愛。恋愛。親愛。ぱっと思いつくのはこれぐらいだけれど、いくつも種類があるのなら、きっとそのどれかにぐらいは引っかかっているんじゃないかって、そう思う。
大きな愛がくれた、小さな愛から始まったこと。そして今ここで歌っている、私の中では確かに愛と呼べるものから始まること。
世界がそれを愛と呼ぶまで、それがいつか、歴史に深く刻まれたあの大きくて、偉大な、だけど愛しい名前に辿り着くまで。そこに至るまでも、もしかしたらあるかもしれないそこから先も、全部が全部途方もなくて想像なんかできないけど。
伝説になるかどうかなんてわからない。それでも確かに、今日ここから、私の旅は始まっていく。
愛から始まる、物語の旅路。そして、刻まれた多くの足跡に続いて、まだ名前の無い私が、きっとあのひとに貰ったアイドルとしての名前を記すまでの物語が。
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