8:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:40:59.46 ID:O0jAO63X0
茉莉藩役人「ふう……人助けとはいえ、知り合いを欺くのは少々気が引けるな」
育「ごめんなさい……それと、ご協力感謝します」
茉莉藩役人「構わんよ。それに、我らの殿だって同じ状況ならそなたと同じことをしただろうからな」
9:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:41:31.06 ID:O0jAO63X0
育「ごめんね。君を助けるためとはいえ、縄で両手をしばったりなんかして」
エミリー「いえ。お気遣いありがとうございます。足の疲れも、関所で少し休んだのでもう平気です」
育「城下までは一本道だけどまだかなり距離があるから、疲れたらすぐに言ってね。それに人通りも少ないし何が起きるかわからない。拙者から離れないでね」
10:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:42:11.56 ID:O0jAO63X0
育「ところで、エミリー殿はどうして日本に? 隣藩の役人に追われていたようだし、何か事情があるみたいだけど……」
エミリー「はい。長い話になりますが……私の両親は、故郷英吉利で町医者をしておりました。それが二年ほど前から、自分たちの培った医学を諸外国に広めるべく世界を旅して回っていたのです」
育「そうだったんだね。なんて立派な……」
11:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:42:44.29 ID:O0jAO63X0
――茉莉城
育「――ということで、身の危険にあると思われるエミリー殿のご両親を見つけ出していただきたいのです」
12:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:43:23.92 ID:O0jAO63X0
――城下町
エミリー「そうですか。育吾郎さまのお父さまは、城下に働きに出ておられるのですね」
13:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:44:02.30 ID:O0jAO63X0
エミリー「ですが、私の国の言葉は日本のみなさんにとっては未知の言語……わからない言葉を話すのは失礼ではありませんか?」
育「そんなことないよ。わからないから知りたいって思えるんだ。拙者はもっと知りたいよ。エミリー殿のこと、英吉利のこと、西洋の医学のこと……」
エミリー「育吾郎さま……」
14:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:44:47.18 ID:O0jAO63X0
――それから数日後
エミリー(村に滞在させていただくわけですから、お仕事もしっかりこなさなくては)
15:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:45:13.65 ID:O0jAO63X0
育「まったく……。エミリー殿、大丈夫?」
エミリー「はい。大丈夫です。お心遣いありがとうございます。けれど、少しびっくりしてしまいました」
育「ごめんね。あの子たちには拙者がきっちり言い聞かせるから」
16:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:45:50.39 ID:O0jAO63X0
――翌日
村人たち「おお、あの異人の娘さん、木下さんちの畑を手伝っているのかい」ジロジロ
17:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:46:23.07 ID:O0jAO63X0
ひなた「……そのとおりだよ。農家の、それも女の子が、お侍さんを指導されている先生に剣の稽古をつけてもらえるなんて、とっても珍しいことだよぉ。あたしが頼み込んだんさ」
エミリー(ひなたさん……? なんだか寂しそうなお顔をされたような)
ひなた「エミリーちゃん、ちょっこし長い話になるけど、いいかなぁ?」
18:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:46:59.89 ID:O0jAO63X0
ひなた「村の裏手にあるあの山――芙美台山っていうんだけど、そこには昔から、蘇芳童子っていう女の子の姿をした鬼が棲んでるんだ」
エミリー「鬼……ですか? それは言い伝えなどではなく?」
ひなた「その鬼はね、10年に一度腹を空かせて山を下りてきて、美里恩村に住む男の子を一人さらって食べてしまうんだわ」
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