209: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:33:08.94 ID:ZRhpxi3E0
善澤「ステージを離れると、また印象が違うね」
紗代子「あ、メガネをしてますから。普段は」
善澤「いやいや。そういう些細な点だけじゃないな。なんていうか……こういう言い方をしたら失礼かも知れないが、普通の女の子という雰囲気になるね」
210: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:33:36.57 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「ずっと外国にいたと……」
善澤「ふうむ。これは、僕が言ってもいいことかちょっと迷うな」
紗代子「教えてください! この通りです!!」
211: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:36:41.30 ID:ZRhpxi3E0
瑞希「カフェなのに個室があるのですか……これは驚きました」
善澤「まあ職業柄、こういう場所も知っているというわけだ。人目を気にする話でも自由にできる場所が必要でね」
212: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:37:42.93 ID:ZRhpxi3E0
善澤「かつて……765プロにある男がプロデューサーとして入社してきた。彼はまだ若く、経験も未熟だったが、並々ならぬ熱意と才能を見出す目。そしてそれを育てる知識を持っていた」
紗代子「もしかして……」
善澤「アイドルの未熟さと、彼の未熟さ、両者が互いに磨き合い成長し合っていけば素晴らしいアイドルとプロデューサーが誕生する予感がすると、高木は目を細めていたものだ」
213: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:38:11.31 ID:ZRhpxi3E0
P「社長! ついに決まりましたよ!! デビューイベントが!!!」
高木社長「……」
214: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:38:38.30 ID:ZRhpxi3E0
高木社長「詳しいことはわからない。善澤に調べてもらったが、事の経緯は不明だ。だが、彼女は既にアメリカにいる。どうやらAISのドン、コーエンと彼女の両親が極秘裏に示し合わせていたらしい」
P「な、なんとか……なんとかならないんですか!? そ、そうだ、訴訟! 訴訟を起こしましょう!!」
高木社長「難しいだろうね……なによりこの移籍を、当の彼女が承知をしているんだ」
215: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:39:16.79 ID:ZRhpxi3E0
善澤「才能を見いだし、育て、その成功を夢見ていたアイドルが突然に引き抜かれ、彼は精神的に大変なショックを受けてね」
紗代子「そんなことが……」
216: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:39:48.04 ID:ZRhpxi3E0
初めて聞くプロデューサーの過去に、紗代子は少なからず衝撃を受けた。
確かに外国に行っていたという話は、結果として嘘だったのかも知れないが、それでもプロデューサーに対する同情が胸に去来する。
苦労して、夢の実現まであと一歩という所での挫折……いや、絶望。その悲しさや苦しさは、いかばかりだっただろうか。
瞬間、あの夜のことが脳裏に蘇る。
765プロオーディションを落ちた、あの夜の自分の苦しみだ。
217: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:42:08.29 ID:ZRhpxi3E0
善澤「うむ。僕も、そうじゃないかと思ったんだ。アメリカでのデビュー、そして活動を始めた時期、そのポテンシャル。写真からでは少しわかりにくいが、そう思って見るとかつての面影もある気がする」
善澤が、件の週刊誌をカバンから取り出す。
この娘が、かつて自分のプロデューサーの担当アイドルだった……
そう思うと、紗代子は不思議な思いがした。
218: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:44:39.61 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「……」
瑞希「……ショックでしたか? 高山さん」
紗代子「え?」
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