122: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:10:28.58 ID:/pT5YGo8o
―― 波止場 ――
指揮官「…………」
指揮官「今度こそ、一人だけでの旅立ちだな」
123: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:10:55.60 ID:/pT5YGo8o
指揮官「……不思議だな」
指揮官「こうして離れていく岸を観るのは、今回で二度目だと言うのに」
指揮官「あの時とはまるで見え方が違う」
指揮官「……本当の意味で、永遠の別れのようだ」
124: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:11:22.33 ID:/pT5YGo8o
………………
…………
125: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:11:49.59 ID:/pT5YGo8o
―― 指揮官宅 ――
指揮官(ここが軍によって俺に与えられた家……の筈だが)
指揮官(荷物は確かに届いているように見える)
126: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:12:16.73 ID:/pT5YGo8o
指揮官「ベルファスト……お前、どうしてここに……」
「最重要拠点の処理件数の数、合同演習の後始末、赤城様の件……」
「これら全てを並列に処理しなければならない母港に、細かい情報の操作が行き届く筈がございません」
127: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:12:44.20 ID:/pT5YGo8o
「……二年前のあの日、セイレーンが残したキューブを一目みた時に、私は直感で分かりました」
「これは限定的ながらも、願いを具現化する特別な物体であるのだと」
「その時は上層部へサンプルとして収奪されるよりは、御主人様の為になるのならと思い、懐へ仕舞い込んでしまったのですが……こうして役に立つなんて、思いも寄りませんでした」
128: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:13:11.33 ID:/pT5YGo8o
指揮官(聞いてはいけない言葉だと、頭の中では理解していた)
指揮官(だが、一欠片の信頼が、否定して欲しいとの想いが、その言葉を紡いでいた)
指揮官「……どうして、こんな真似を……?」
129: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:13:38.33 ID:/pT5YGo8o
指揮官(麻痺したように働かない頭で、それでも背後へ振り返る)
指揮官(ぶつかり合う視線の先では、金色に濁った瞳が歓喜に打ち震えていた)
「御主人様はもうどこにも行けません。誰に遭うこともありません」
130: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:14:05.70 ID:/pT5YGo8o
先達の徳行は、私にとってはまさに青天の霹靂だった。
そうだ、欲しい物があるというのに、なにを我慢する必要があったのだろう。
131: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:14:32.80 ID:/pT5YGo8o
………………
…………
132: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:14:59.65 ID:/pT5YGo8o
―― 反応消失 ――
―― 実験結果 / 不明瞭 ――
133: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:15:26.53 ID:/pT5YGo8o
―― ………… ――
134: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:15:53.70 ID:/pT5YGo8o
―― 余剰情報 / 確認 ――
―― 再生を開始します ――
135: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:16:21.21 ID:/pT5YGo8o
―― ??? ――
ピュリファイアー「―――っぷはぁ!!」ザバァ!
136: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:16:48.78 ID:/pT5YGo8o
オブザーバー「無駄よ。歪に、と言ったでしょう。あの娘が生み出した空間は、通常の世界とは位相が完全にズレている」
オブザーバー「最早私達でさえ流動を続ける座標の特定は不可能。言葉通り永遠に、彼女たちは二人だけで孤立した世界を漂うのでしょうね」
ピュリ「うげー……つまんなさそー」
137: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:17:15.55 ID:/pT5YGo8o
オブザーバー「それを調べるための実験だったのよ」
オブザーバー「本来、感情の抑制さえ行われていないフルスペックの存在は、”特異点”の下でしか生まれてこない」
オブザーバー「にも関わらず、生まれてしまった特異個体。それが通常の人間による運用で、どこまで出来るのかを見守るはずだったのだけど……」
オブザーバー「藪をつついて蛇を出してしまったお陰で、不完全燃焼で終わったわね」
138: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:17:42.43 ID:/pT5YGo8o
オブザーバー「……さて。この世界での記録は、本当にこれでお終い」
オブザーバー「本来ならこれは、観測を終えた取るに足らない観察日記」
オブザーバー「数多に繰り返される実験の一つとして、ただ埋もれていくだけの物語に過ぎないものだけど」
139: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:18:09.14 ID:/pT5YGo8o
―― 記録映像 / 終了 ――
―― 情報転送 / 遮断 ――
140: ◆rDMPFYnrzE[saga]
2019/12/04(水) 19:18:47.05 ID:/pT5YGo8o
最後まで読んで頂き、本当に有難うございました
141:名無しNIPPER[sage]
2019/12/04(水) 19:22:00.75 ID:oBGEEdpK0
乙
指揮官に救いは無かったよ…
142:名無しNIPPER[sage]
2019/12/06(金) 02:10:50.93 ID:qk/phZPy0
いいねえ…
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