50: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/08/23(金) 00:20:31.08 ID:2euMv+sS0
それは決して感傷ではない。私は姉さまや、仲間のみんな――家族のみんなを弔うために、死を悼むために、海を利用しているわけではない。ただ私は海が好きなだけなのだ。自由の象徴としての海が。
船首には、今は帆は折りたたまれているが、金属製のマストが備え付けられてる。そこからずうっと、船体中央を通り越して後部までがフラット。そして船尾には、階段状になった複層式のスペースがある。管制室や操舵室だろう。
トン数は200前後といったところか。内航向けの小型機帆船をリノベーションして使っている? それにしたってこの規模の船舶は漁船やクルーザーとはわけが違う。私はまだ、艦娘と提督以外の乗組員を見ていない。
51: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/08/23(金) 00:21:01.86 ID:2euMv+sS0
「医務室は今さっきの階段を下りた先ですねー。中央部分に居住区角は集中してます、ポーラたちの部屋もあのあたりでー、食堂は船尾の、遠距離通信レーダーと気象観測アンテナありますよねぇ、あの真下ですぅ。
時間はきっと、たっぷりありますからぁ……気を落とさないで、元気出して、頑張りましょー」
ポーラはぽやぽやした笑顔のまま踵を返し、甲板を歩いた。そして甲板に備えられたハッチの僅かな段差に脚を引っ掛け、盛大に転ぶ。
52:名無しNIPPER[sage]
2019/08/23(金) 07:01:02.55 ID:jGa3pAAVo
おつ
53:名無しNIPPER[sage]
2019/08/23(金) 12:23:55.01 ID:wvFyOa+5O
乙
意外な、CSARチームにポーラとな?
まさか、まさかの麻酔担当!?
54:名無しNIPPER[sage]
2019/09/20(金) 23:24:15.64 ID:xAIihgQXo
待ってる
55:名無しNIPPER
2019/09/30(月) 22:49:11.89 ID:P1xDypFl0
じゃー……ちち、ち、ちっ、ちっ……。
プラスチックのかたかた鳴る音とともに、ルーレットが止まった。数字はまたも2。先ほどから1〜3しか出ず、それなのに必要のないところで8や9が出て、よくないマスへと突き進む。
「会社が倒産。500万支払う」。
56: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:50:07.53 ID:P1xDypFl0
しれっとした顔で不知火は言う。大局は既に決している。最初はやる気を奮っていた彼女も、今や消化試合を続ける面持ちで、けれど自らが誘ったという負い目からか、何とか私にそれを悟らせまいとする意地が見え隠れしていた。
人生ゲームは果たして二人でやるゲームだったろうか。いや、結局は私が弱すぎるのが悪いのだ。というよりも、不幸すぎるのが。
完全情報ゲームならばまだしも、不完全情報でここまで差が開いてしまうのは、逆に申し訳なくなってしまう。
57: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:51:18.12 ID:P1xDypFl0
「色々持っているのね」
感心してしまう。
58: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:53:29.09 ID:P1xDypFl0
玉を握った私が先手だ。7六歩。まずは角道をあける。
「ポーラは読めません。荒唐無稽と言いますか、一貫性がないのです。ちまちま稼いでると思えば急に全財産を賭けてみたり……酩酊の為せる業なのかもしれませんね。
グラーフはいかにもドイツ流です。確率を計算し、期待値通りに動きます。定石のある場面ではきちんと定石を打ってくる。場面によってぶれない。質実剛健とは彼女のためにあるような言葉ですね」
59: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:55:44.15 ID:P1xDypFl0
「一番強いのはグラーフさん?」
「いえ」
60: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/09/30(月) 22:56:54.93 ID:P1xDypFl0
その気持ちを少し考えてみて、わかるようなわからないような、不思議な気分になる。たとえば姉さまが急に幸福の連続に見舞われたとしたら、逆に心配になるだろう。そののちに不幸な目に遭ったとき、喜びさえ覚えるかもしれない。
酷薄だという非難は尤もだが、てんで的外れでもあった。変わらない日常が何よりも貴重である――そんな使い古された文言は、当然この世のすべてではないけれど、少なからず使い古されてきたなりの重みや実感を伴う。
ぱちん、ぱちり。
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