【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:28:30.44 ID:oj63shz20
「最初に会った頃は、そんなクセ無かったわよね。……そのクセ、二年くらい前からかしら」
「二年前」
そう言われて強烈に思い当たる節があった。二年前、有栖川夏葉に心底惚れ直す出来事があったのを思い出した。その時の強い印象が、知らず知らずのうちにクセを作っていたに違いない。
以下略
AAS
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:29:03.59 ID:oj63shz20
「学生の頃は日高舞が一押しだったんだ」
さも当然のように言い放った。夏葉は腕を組み、その視線はたちまち凍てついた。上目遣いだったはずなのに、見下ろされているかのような重圧を覚える。
「……へえ、そうなのね、ふぅん」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:29:33.70 ID:oj63shz20
車に戻りエンジンキーを回すと、夏葉の顔が強張った。
カーナビの液晶ディスプレイには次の目的地が表示されている。事務所を出発する前に設定しておいたものだ。すなわちそれは、俺が「結婚しないか」と口にする前に設定された目的地ということになる。
「……あー、行き先変えるか? この近くならショッピングモールとかあるけど」
「いいえ、行くわ。一度決めたことだもの」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:30:27.87 ID:oj63shz20
その教会に着いたのは午後三時をまわった頃だった。
結局、到着するまで夏葉は一言も発さなかった。一時間ほど車に揺られて、その途中の十五分ほどの間に強い通り雨もあったのだが、それでも彼女は沈黙を貫いていた。
「着いたぞ」
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:31:26.47 ID:oj63shz20
それは同じ質問だった。かつては答えられなかった質問だ。あの当時は、鐘に込められた意味など、考えたこともなかった。だけど、
「……不幸を追い払って、幸福を呼ぶために。そして遠くの人にも想いが届くように。そういう平和の鐘だ」
「憶えていてくれたのね」
「まあ、な」
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:31:59.10 ID:oj63shz20
「迷うのも、満たされないように感じるのも……結局のところ、夏葉が誰よりもアイドルだった自分を大切にしてきたってことじゃないか」
俺は心からの言葉を口にした。
「夏葉はよくやったよ。今の苦しみも虚しさも、決して悪い物じゃない。むしろ成し遂げたからこそあるものだ」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:32:34.81 ID:oj63shz20
「わぁー! 本当に夏葉さんなんですね! わぁ! わわぁ! わわわわあっ!」
「喜んでもらえて嬉しいわ」
夏葉が手を差し出すと、小柄なその女性は飛び跳ねでもするように、せわしなく握手に応じた。
「あの、そちらの方は……」
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:33:26.61 ID:oj63shz20
「わ、わたし……! あの、中学生の頃から夏葉さんの大ファンなんですけど、というか、この写真を見てファンになったというか……あ、それでその、そのですね。この前に彼に結婚を申し込まれて、この雑誌のこと思い出したら……そしたら、本物の夏葉さんがいて、びっくりしちゃって、サイン欲しくなっちゃって……えっと、だからその、そういうわけで……あ、あれ……?」
男性が半歩前に出た。女性と俺たちの間に入り、やや横向きに立つ。
「どうどう」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:33:54.06 ID:oj63shz20
ひとしきりサインを堪能した後、女性のほうがおずおずと俺と夏葉を見比べた。
「どうしたの?」
「……こんなこと訊いていいのかな、ってホントは思うんですけど」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:34:38.92 ID:oj63shz20
女性はきょとんとしていた。まさか自分なんかに憧れの人が何かを訊ねてくるなんて、といった顔だ。夏葉は普段通りの微笑だ。だが俺にはわかる。夏葉は自分の声が震えてしまわぬように、笑顔の下で神経を張り詰めていた。
「――アナタは、なぜ結婚しようと思ったの?」
夏葉が訊く。その問いかけに、女性は申し訳なさそうに縮こまった。
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:35:04.57 ID:oj63shz20
教会のある高台を降りて、海岸にある砂浜に出た。二人で並んで海を見ている。
ここが最後の目的地だ。この『デート』の目的地はいつも、どこかしらかの海と決めている。夏葉にとって海という場所は特別な場所だ。そして、同時に俺自身にとっても。
「……青いな」
「それは海のこと?」
以下略
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