【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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19: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:31:26.47 ID:oj63shz20
 それは同じ質問だった。かつては答えられなかった質問だ。あの当時は、鐘に込められた意味など、考えたこともなかった。だけど、

「……不幸を追い払って、幸福を呼ぶために。そして遠くの人にも想いが届くように。そういう平和の鐘だ」
「憶えていてくれたのね」
「まあ、な」

 忘れられるわけがない。その後に続く彼女の言葉だって、その一字一句を憶えている。

『だからね、プロデューサー。私――……』
『……』
『今は……あの鐘みたいに、幸せを海の向こう側まで届けられるような』
『……そんな、アイドルでいたいわ』

 それほど彼女の言葉に惹かれていた。アイドルとして確固たる理想を持つ彼女に、それを迷いながらも笑顔で語れる彼女に、俺は焦がれていた。今にして思えば、俺にとって有栖川夏葉は誰よりも『アイドル』だった。

「……私は……」
 目の前の夏葉の顔が曇る。

「私は、幸せの鐘でいられたのかしら」
「……夏葉自身は、どう思っているんだ」
「私は……上手くやれたと思っているわ。理想を遂げられたと信じてる。でも……この気持ちは……この気持ちを、感じてしまう以上は……」

 夏葉は自分の身体を抱きかかえるように腕を組んだ。

「引退してからずっと、穴が空いてしまったような気持ちが消えないのよ。燃え尽き症候群というものなのかしらね。……私らしくないと、アナタは思うのかしら」
「迷うことは悪いことじゃない。それに今までだって何度も迷ってきただろ。最初の頃は他のアイドルの歌い方を真似ようとしたこともあった」
「……懐かしいわ」



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