【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:21:33.85 ID:oj63shz20
「ねえ、プロデューサー」
「なんだ?」
大人しく夏葉の言葉を待った。俺は先の婚約の暴発を悔いていた。告白をしたこと自体に後悔はないが、気持ちが先走っていたのは疑いようがない。
夏葉が口を開く。
以下略
AAS
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:22:13.83 ID:oj63shz20
普段持ち歩いている手提げカバンは置いていくことにした。同様に夏葉も手ぶらで車を降りる。貴重品だけをポケットにしまって、俺たちは駐車場を後にした。
それは暗黙の了解であるような気がした。結婚、将来、幸福……そういった直ぐには答えが出ない問いを、取りあえず車内に置いていこうという同意だ。どうせ一時間とかからずに車に戻るのだから、と。
「こっちよ」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:22:41.89 ID:oj63shz20
「おっ」
「何かあった?」
「懐かしい物を見つけた。ほら、そこの掲示板だ。サークル勧誘のチラシが張ってある。……『アイドル研究会』のもあるぞ」
かつて夏葉を迎えに来た時のことだ。早めに着いた俺は掲示板を眺めて時間を潰していて、後から来た夏葉と、掲示された勧誘チラシについて会話に花を咲かせたことがある。その時に話題に上がったサークルの名前が『アイドル研究会』だった。
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:23:16.56 ID:oj63shz20
「そうね。アナタは努力を『手段』と割り切れてしまうタイプだわ。必要だと思ったらどこまでも努力ができてしまう」
夏葉が人差し指を立てた。
その言葉の一部には思い当たる節があった。逆説的だが、いつかの夏葉が口にした、『これが努力の楽しいところよね!』というセリフに感銘を受けたのを思い出した。
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:24:07.36 ID:oj63shz20
「そういうアナタがたまに心配だったわ。気持ちがわかる、ってそういうことよ。きっと私たちは、お互いのずれた部分を意識し合っていたんじゃないかしら」
「ずれた部分、か」
「だからこそ噛み合っていたとも言えるわね。少しのずれが在るおかげで私たちは噛み合っていた。アナタの黙々とした努力を見て、私だってまだまだ頑張れるはずよ、っていつも自分を鼓舞していたわ」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:24:39.49 ID:oj63shz20
学食は活気ある賑わいと彩りを見せていた。変わらずの懸念事項であるのは目立つことだが、それも杞憂に終わりそうだ。冴えないスーツ男とサングラスの美女が混じっていても奇妙ではない程には多種多様な人がいる。
ぶかぶかのリクルートスーツを着た男女に、髪の天辺から爪先まで派手な色に染めている女性、よれよれの白衣に眠そうな目をした壮年の男性などなど。他にも一括りにできぬ人々が集団を成している。そして姿格好以上に、学食にいる各々が自分自身のことに手一杯であるという印象を受けた。無論、良い意味で。
俺はカツ丼を、夏葉はサンドウィッチを注文して席に着いた。
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:25:12.84 ID:oj63shz20
「生まれは……いわゆる中流階級ってことになるのかな。中学までは地元で過ごして、高校大学は成績に見合ったところに進んだよ。卒業と同時に一般企業に就職した。そこに二年間勤めた後に、283プロに転職して今に至る」
こんな感じでいいのだろうか、と心の中で疑問符を浮かべた。人生の要約というのは案外難しい。
「成績はよかったの?」
「まあ、そうだな。トップクラスではなかったけど。要領だけは良かったから」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:26:10.63 ID:oj63shz20
「理由は働きすぎだ。休日返上、残業は当たり前で……周囲には過労死まっしぐらに見えていたらしい。それで『どうせ死ぬなら好きな仕事で死になさい』って諭されて、天井社長に紹介された」
その上司は俺がアイドルの世界に興味があることを知っていた。何かと目をかけてくれた人だった。
「それで社長に会って……その時に言われたのが、さっきの『結果主義に囚われやすいものだ』って言葉だ。他にも厳しい言葉や難解な言葉をかけられたよ」
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:26:43.35 ID:oj63shz20
「……マフィンの話になるんだが」
「ええ」
「マフィンってお菓子の中では簡単に作れる方でさ。手軽なんだ。だけど生地を混ぜるときだけは注意が必要で、そこを『ちゃんと』できてないと全てが駄目になってしまう」
「そうなの」
以下略
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◆/rHuADhITI
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2019/08/18(日) 02:27:42.74 ID:oj63shz20
「アイドルに憧れたのは、彼らに『ちゃんと』がなかったからだ」
誤解を恐れずに口にした。アイドルに定まった正解はない。夢を叶えるために道なき道を進もうとする勇者だと、若い時分にはそう思えたのだ。夏葉は「わかるわ」と頷いた。
どんぶりの最後の一口をすくって、俺は懐かしむように笑った。
以下略
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