【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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7: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:22:41.89 ID:oj63shz20
「おっ」
「何かあった?」
「懐かしい物を見つけた。ほら、そこの掲示板だ。サークル勧誘のチラシが張ってある。……『アイドル研究会』のもあるぞ」

 かつて夏葉を迎えに来た時のことだ。早めに着いた俺は掲示板を眺めて時間を潰していて、後から来た夏葉と、掲示された勧誘チラシについて会話に花を咲かせたことがある。その時に話題に上がったサークルの名前が『アイドル研究会』だった。

「あら、本当に懐かしいわ。チラシのレイアウトとかはさすがに変わっているみたいね」
「レイアウトなんてよく覚えてるな。俺はさっぱりだ」
「大切な思い出の一部だもの。アナタだって全部忘れたわけじゃないでしょう。ここにあるチラシを見て、アナタが私に言ったことは覚えてる?」

 夏葉が指をさした。掲示板の上では、テニス、ラグビー、ワンダーフォーゲル、旅行……といった様々なチラシが、楽し気に青春の風情を醸し出している。今見ても心惹かれるものばかりで、当時の自分の言葉を思い出すのは容易だった。

「たしか『サークル、やりたいか』って聞いたと思う」
「それで、その後は?」

「夏葉に低い声で『どうして?』って聞き返された」
「……アナタも、よく覚えているじゃない」

 夏葉はサークルに入っていなかった。大学の勉強とアイドル活動に手一杯で、そんな時間はなかった。それで俺は心配になったのだ。休むとか遊ぶとか、そういう『やりたいこと』が自由に出来ていないんじゃないのか、と。

「まあ結局、俺の独り相撲だったんだけどな」

 夏葉にとってはアイドル活動こそが『やりたいこと』だったという落ちだ。俺にとってそれは失言をした思い出でしかなくて、だから、その後の夏葉の言葉は意外だった。

「でも、今ならアナタがそう言いたくなる気持ちもわかるのよ」
「夏葉?」
「なんて言えばいいのかしら。多分……私とアナタって、努力に対するスタンスが違うのよ。あの時はそんなこと考えもしなかったけど」

 夏葉は掲示板を離れて歩き出した。俺もその後に続く。


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