32: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:41:55.00 ID:RAUxaTtJ0
「最初に今回の仕事……、着物のモデルの仕事があるって聞いたときに真っ先に頭に浮かんだのがエミリーだった。他の誰でもなくてエミリーだったんだ」
「そう、なんですか……」
それは知らなかった。尽力してくださっていたことは知っていたけれど、そういう仕掛け人さまの胸の内までは何も知らない。
33: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:42:56.20 ID:RAUxaTtJ0
「だけど、どうしてもそうは思えなかった。だって真っ先に浮かんだのはエミリーだったからさ。でも浮かんだ理由までは深く考えてなかったから、改めてどうしてだろうって考えたときに、エミリーだからなのかなって思って」
「私、だからですか……?」
私を思い浮かべた理由が私だから……?
34: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:43:33.94 ID:RAUxaTtJ0
「日本が大好きで、大和撫子になりたくて、一生懸命努力して。そういう風に歩いてきたエミリーだから伝えられる着物の魅力があるんだって松山さんには知ってほしかったから。……なにより」
そうして仕掛け人さまは言葉をつづけた。
「エミリーに知ってほしかったんだ。エミリーにしかできない日本の魅力の伝え方があるって。エミリーだけの大和撫子で見せられるものがあるって」
35: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:44:28.06 ID:RAUxaTtJ0
膝を抱えて部屋で泣いている。いつまでも芽が出なくて悔しい思いをしている。日本語が上手に話せなくて嫌になっている。正座で痺れた足を恨んでいる。鏡を見てため息をついている。
そんな私。
大和撫子になりたいと願っている。日本が大好きでいる。躓いても立ち上がって進み続けている。日本語を覚えて喜んでいる。上手に抹茶を点てられて笑みがこぼれている。努力を続けている。
36: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:47:00.66 ID:RAUxaTtJ0
だけど、この花は。
「私だけの大和撫子に……」
いつだって私と一緒だった。
37: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:48:01.69 ID:RAUxaTtJ0
歩んできた道は正しいのだと。今までの努力は無駄なものなんて一つもないのだと。
まだ蕾もつけない名前も知らない花だけど、それは必ず咲くのだと。
撫子がずっと日本の傍にあったように。
そういう花。
38: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:48:57.95 ID:RAUxaTtJ0
仕掛け人さまは一瞬目を丸くしたあとに小さく笑って言う。その言葉は何よりも心強く、靄なんて吹き飛んでしまうくらい。
「そのための仕掛け人じゃないか」
「ふふっ。そうでしたね。心強いばかりです」
39: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:50:12.97 ID:RAUxaTtJ0
< エミリーさんのために、一からデザインいたしました。>
その一行に込められた意味を感じて、目頭が熱くなってしまう。だけど涙は流さない。
だって、私は大和撫子になるのだから。
40: ◆DbvMVEE3z2[sage saga]
2019/06/16(日) 00:54:08.76 ID:RAUxaTtJ0
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
エミリーの過去に想いを馳せていたら出来上がりました。
エミリースチュアートという彼女について思うところはたくさんありますが自分なりの一つの答えを詰めてみました。
41: ◆NdBxVzEDf6[sage]
2019/06/16(日) 00:57:32.13 ID:cFgXJVUc0
こういう過去があっての話凄く好みだわ
乙です
エミリー(13) Da/Pr
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