134:名無しNIPPER[saga]
2019/02/13(水) 20:00:45.75 ID:OvpWhSduo
弟は野犬が自分に向かってくるのを見ると、くるりと向きを変えて走った。
ひと掻き、ひと咬みは死を意味している気がしていた。
野犬が背後に迫る足音が聞こえ、やがてその足音がふっと途絶えた時、弟はそれが地を蹴って跳躍したことを知った。
135:名無しNIPPER[saga]
2019/02/13(水) 20:02:46.00 ID:OvpWhSduo
悲鳴と怒号が混ざりあった絶叫が、夜の街中にこだました。
弟は、自分をアスファルトに押し付けているものがふいに離れるのを感じた。
灰色のパーカーとジーンズ姿の姉が、自分のすぐ近くで怪物と揉み合っていた。
136:名無しNIPPER[saga]
2019/02/13(水) 23:00:46.52 ID:OvpWhSduo
野犬が姉の肩に咬みついた。
強力な顎でむきだしの肌を咬み破り、腱を針金のように引っ張る。
血がほとばしった。
137:名無しNIPPER[saga]
2019/02/13(水) 23:12:59.97 ID:OvpWhSduo
姉は右手の拳を握りしめ大きく振り回し、野犬の下顎に命中させた。
それはまぐれ当たりに近かった。
深い咬傷のために火がついたように痛んでいる肩まで衝撃が走った。
138:名無しNIPPER[saga]
2019/02/13(水) 23:42:25.21 ID:OvpWhSduo
姉は震えながら立ち上がり、辺りを見回し弟の姿がないのを確認した。
無事逃げ果せることができたようだ。
少し安堵しながら怪物から目を離さずに後ずさり始めた。
139:名無しNIPPER[saga]
2019/02/13(水) 23:50:53.40 ID:OvpWhSduo
弟「大丈夫!?」
姉「バカ!戻ってくんな!」ハァハァ
弟「今近所の人におまわりさん呼んでもらったから…!」
140:名無しNIPPER[saga]
2019/02/13(水) 23:59:13.45 ID:OvpWhSduo
姉(ちくしょう。噛まれた。噛まれた。噛まれた!!)
姉(まさか狂犬病持ちじゃないよな…くそ!)
ポタポタ…
141:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 00:04:21.76 ID:scTEIUsao
姉「」ガク
弟「姉ちゃん!」
ウォン!ウォンウォン!!
142:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 00:21:17.33 ID:scTEIUsao
(だれか、助けて)
姉は心のなかで叫んでいた。
(お願い。私達を助けて)
143:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 00:36:57.69 ID:scTEIUsao
怪物が吠え声を上げ、地を蹴り、突進してきた。
(こい!)
姉は腰を落とし、高目の速球を打つようにバットを振った。
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