8: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/10(木) 23:13:50.63 ID:Av4Jk77s0
しかし、祈りは全く実を結ばず、むしろ、仇を成したように、
最悪のタイミングで女性は派手にこけた。
僕の目の前で尻餅をついて、かばんの中身がこぼれ出る。
9: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/10(木) 23:17:12.28 ID:Av4Jk77s0
「あの、大丈夫ですか?これ落ちましたけど…」
「あっ、はい!大丈夫です!ありがとうございます!」
慌てて荷物を拾って、一歩こちらに踏み出した瞬間、また滑ってこけそうになった。
10: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/10(木) 23:21:38.83 ID:Av4Jk77s0
「ああ、はい。なんとか。」
なんともない風を装って、差し伸べられた手にも頼らず、
何とか自力で立ち上がろうとしていたが、雪と痛みで思うように立てない。
もたもたしていると、女性はすっと僕の左脇に入り
11: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/10(木) 23:23:42.81 ID:Av4Jk77s0
女性は何度も謝った後、耳を真っ赤にしながらニット帽を目深にかぶって
逃げるように駅方面へ歩いていった。
あの人またこけるんじゃねぇか、と心配しながら後ろ姿を見つめる。
無事転ぶこともなく姿が見えなくなるのを確認してから、
12: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 11:01:09.44 ID:piIM8FBL0
「これどうしようかなぁ…」
大学図書館の前で、拾った携帯をふらふらさせながらつぶやく。
13: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 11:02:01.42 ID:piIM8FBL0
捻挫した後、親と部活仲間の反対を受けたが、受験勉強を言い訳にして
強引に部活を辞めた。
顧問は止める素振りはみせたものの、勉強を始めたいことを伝えると
14: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 11:03:27.49 ID:piIM8FBL0
家の近所にある大学図書館はかなり昔に建てられたもので、
詳しくは分からないが西洋の建築様式である。
2階構造で、1階が軽食をとれるような休憩室とトイレが設置されており、
15: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 11:06:43.01 ID:piIM8FBL0
午前中は特設コーナーにあった科学雑誌と持ってきた小説を流し読みをして過ごした。
そして、昼食の菓子パンを食べたあと、図書館の前で携帯の所在を案じていないか案じている。
警察に拾得物として届けた方が良いかもしれないが、正直面倒だ。
16: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 11:10:41.91 ID:piIM8FBL0
雑誌と小説には飽きたので、捻挫の疼痛を和らげる方法がないか調べるため
分かり易そうな対症療法の本を何冊か探しに行った。
17: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/11(金) 11:12:01.31 ID:piIM8FBL0
「あっ、こけた人」
考える前に言葉が出てしまい、女性が少し怪訝な顔をして顔を上げる。
少しこっちをみてからはっとした顔になる。
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