9:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:14:04.36 ID:wXX+fiS7o
都会のビルの地下にある、小さくて古くて暗いこんな場所にもアイドルがいて、一生懸命になって歌っている。
子供で、無知だった私には驚きでした。
自分の中のアイドル像は、私の生まれるずっと前の、在りし日の彼女たちの姿であり、TVでの華々しい光り輝くステージばかりを眺めてきた私にとって、
今ここにいるアイドルのような人は、想像していたのとは全く異なる舞台にいたのです。
10:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:15:06.86 ID:wXX+fiS7o
──────
最後の一曲が終わり一旦退場していったあと、アイドルのお姉さんはもう一度前へ出てきて、
今度は小さな箱を抱え、買ってください、一枚500円です、というように観客席の方へ叫んでいました。
11:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:16:45.01 ID:wXX+fiS7o
「今日は観に来てくれてありがとうございます! よかったら、CDも一枚500円で発売中ですので、ぜひぜひお買い求めください! キャハッ☆」
「あ、いえ……わたし……」
お姉さんが最後に軽くポーズを決めると、頭につけたウサギの耳もぴょこんと跳ねていました。
12:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:18:39.76 ID:wXX+fiS7o
──────
一緒に地下の劇場から街へ出て、お話をしながらお母さんを探しました。
アイドルのお姉さんはすごく可愛らしくて優しくて、私の話を楽しそうに聞いてくれます。
13:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:20:03.52 ID:wXX+fiS7o
「そうだ。はすみちゃんの好きなアイドルは誰ですか?」
今度はお姉さんが質問してきます。
14:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:22:06.49 ID:wXX+fiS7o
「子供のころからずっと、昔のアイドルが好きだったんですか?」
「はい、お母さんが大好きで、私もずっと聴いてて……」
「歌ったり?」
「は、はい!」
15:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:23:55.60 ID:wXX+fiS7o
──────
ようやく交番に着くと、お姉さんがおまわりさんに事情を説明してくれました。
どうやら母はこことは違う別の交番に相談に行っていたようで、無事見つかったと、おまわりさんが連絡を入れてくれました。
16:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:25:06.73 ID:wXX+fiS7o
30分後、母が交番にやって来ました。
怒ったような、悲しんだような、喜んでいたような、安心したような、そんな表情。あまり覚えていませんが、とにかく心配をかけてしまったことを謝罪しました。
おまわりさんにもご挨拶をし、交番を出て駅へ向かう途中、母が尋ねました。
17:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:26:00.01 ID:wXX+fiS7o
「おかあさん。わたし、あいどるになりたい!」
18:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:27:29.16 ID:wXX+fiS7o
――――――
憧れはいつしか夢に、夢はいつしか決心に変わっていきます。
ですがそれは、憧れを憧れでなくすため、その夢と真剣に向き合うということ。
19:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:29:25.67 ID:wXX+fiS7o
――――――
新学期が始まって間もなく、桜の花びらも散りきらないようなある日の放課後、忘れ物を取りに教室にもどった私は、引き戸に手をかけたそのとき、
中に人の気配が残っていることに気がつきました。
60Res/60.60 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20