10:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:15:06.86 ID:wXX+fiS7o
──────
最後の一曲が終わり一旦退場していったあと、アイドルのお姉さんはもう一度前へ出てきて、
今度は小さな箱を抱え、買ってください、一枚500円です、というように観客席の方へ叫んでいました。
どうやらこの場でCDを売っているらしいということも、私には衝撃でした。
ステージを見に来ていた人たちはCDのほうにはあまり興味を向けず、続々とその劇場を後にします。
そして、残っている人もまばらになっていたのに、私はまだそこにいました。
そのうち、観客はいなくなり、部屋が照明で明るくなりました。殺風景な真っ黒の壁が目に入ります。
そのまま設営のスタッフさんが撤収作業に入り始めました。
私は部屋の隅っこにじっとしていたので、しばらくは目立たず気づかれなかったのかもしれません。
「あの、すみません」
「わっ…!?」
振り返ると、先ほどステージに立っていたお姉さんがこちらをじっと見ていました。
「ぁ……ぇっと……」
少しだけ身じろぎし、それ以上は体が固まって動きません。
思えば私は入場料も払わずに勝手にステージを覗いた、不法侵入者です。
おまわりさんに捕まるかも? と、子供ながらにおびえながらお姉さんと視線を合わせていると、
「あの、初めまして! ですよね?」
私の心配とは裏腹に、お姉さんはにこりと笑いかけてくれました。
60Res/60.60 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20