250: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 22:59:45.50 ID:LvNYVq+e0
でも。とアンチョビは続ける。
「言った通り、これは私だけの問題じゃない」
「戸庭の問題でもあるし、ミカの問題でもあるし、もっと言えば柿葉の問題だってあるだろう」
「それに、ミカと暮らすのだって、私は悪くないと思う」
251: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:01:01.49 ID:LvNYVq+e0
アンチョビは俺の先をいっているなあ。
俺は、アンチョビを一人悩ませてしまっていた。
俺も考えるべきだったのだ。
いつかの未来でなく、近い将来の話として。どうすべきかを。
252: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:02:45.17 ID:LvNYVq+e0
正直、俺の欲だけをいえば、そりゃあアンチョビには、俺の家にいてほしい。
ファンなんだ。当たり前だ。
今は、アンチョビの言う通り、家族でもある。
家族がいなくなるのは誰だって辛いだろう?
253: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:03:58.74 ID:LvNYVq+e0
「え、なんで」
口に出して、気付いた。何でも何もないだろう。
「もう働き過ぎないか? 食事はちゃんと取れるか? 酒ばっかり飲んでちゃ駄目なんだぞ?」
254: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:05:58.94 ID:LvNYVq+e0
アンチョビと、この世界を繋ぐ唯一のものは、ガルパンだ。
多くの人に認められたし、公式の存在にもなれた。
それは全て、ガルパンのおかげだ。切っても切り離せない。
255: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:08:29.60 ID:LvNYVq+e0
俺が言うと、アンチョビは顔を強張らせた。
「そうか。そうかあ」
天井を仰いで、あくまで爽やかに、言葉を吐き出す。
256: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:11:00.79 ID:LvNYVq+e0
ミカが「それで良いのかい」と三度問いかけ、アンチョビが「良いんだ」と答えるのを、数キロ先の出来事のように聞いた。
胸の痛みはあれど、崩壊の物音は聞こえなかった。
静かに、体に染み付いていた色がするすると剥がれ落ちていくように感じた。
257: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:12:24.21 ID:LvNYVq+e0
そういうことを言うなよ。
俺もそれで、瞳に水滴が滲んだ。
誤魔化そうと、ふいに立ち上がってキッチンへと歩いたが、あからさまだからアンチョビにはばればれだろう。
258: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:14:13.68 ID:LvNYVq+e0
2018年4月15日。日曜日。
アンチョビ、引っ越し当日。
「じゃあ、またなっ!」
259: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:15:48.42 ID:LvNYVq+e0
アンチョビが我が家からいなくなる。
しかしよくよく考えてみれば、それは大した事実ではないように思えた。
アンチョビに会いたければ、大洗に行くだけで良い。
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