256: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:11:00.79 ID:LvNYVq+e0
ミカが「それで良いのかい」と三度問いかけ、アンチョビが「良いんだ」と答えるのを、数キロ先の出来事のように聞いた。
胸の痛みはあれど、崩壊の物音は聞こえなかった。
静かに、体に染み付いていた色がするすると剥がれ落ちていくように感じた。
あぁ、喪失感というのは、こういう風に訪れるんだなあ。
体全体へ熱が広がり、心臓がぐつぐつと煮えたぎっているのがわかる。
辛くて泣いてしまいそうだ。
「え、えっと、それじゃ、これから、どうしますかっ」
「そうだね。同居の日取りを決めておこう」
いつになく地に足のついた言葉を吐くミカに、俺は冷静さを取り戻した。
そうですね、と前置きし、言葉を繋げる。
「引っ越すなら、できるだけ早い方が良いでしょう。あんまり長くいても仕方ないし、しがらみみたいなのが、増えてくし」
「しがらみ?」
聞き返すアンチョビが、瞳を震わせているのがわかった。
「そんなの、とっくに出来てる」
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