【モバマス】クラリス「魔女・セイラム」
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24:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:01:42.49 ID:TXxgAIfuO
 私は午後の礼拝に参加する必要がなく、私室で気もそぞろに日暮れを待ちました。木造りの寝台に腰掛け、何を見るわけでもなく何かを見ているうち、虹彩が闇の訪れに反応を始めます。電灯をつけることさえ忘れていました。

 少しののち、ノック音が響いて、扉の奥からオレンジ色の明かりが差し込んできました。

「……電気くらい点けようよ」
以下略 AAS



25:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:02:18.23 ID:TXxgAIfuO
「実はね。ここ、結構前から資金繰りに困ってるんだよ。ちょっと……っていうか、だいぶ?」

 話はごく単純なものでした。

 もともと、規模の小さなこの教会の運営は余裕のあるものではなかったそうです。
以下略 AAS



26:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:03:11.67 ID:TXxgAIfuO
「本当はね」

 思索に沈みかかった私を、セイラムの申し訳なさそうな声が呼び戻します。

「貴女が十八になったら……正規に誓願を立てて、正式にシスターになる段が来たら。そこでちゃんと話すつもりだったんだ。どうしたって愉快な話じゃないから。こう言っちゃうと気を悪くするかもしれないけど、貴女はまだ、やっぱり子供だったから」
以下略 AAS



27:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:04:04.41 ID:TXxgAIfuO
「えっ。ちょ、ちょっと?」

 慌てた声が聞こえて、私も慌てて目尻をぬぐいました。

「すみませんっ」
以下略 AAS



28:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:04:47.97 ID:TXxgAIfuO
 なお慮るように顔を覗き込むセイラムに、私は努めて笑みを向けました。

「あの日。去年の聖誕祭に。言ったでしょう」
「……聖誕祭?」
「この居場所を一緒に守ろうと、貴女が。私は、はいとこたえたじゃないですか」
以下略 AAS



29:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:05:56.71 ID:TXxgAIfuO
 私が神父様に意思を伝えると、彼はきわめてかしこまったふうに、「あらためてよろしくお願いするよ」とおっしゃいました。ほかのシスターたちも、私の選択を喜んでくれました。

 心新たに、人心のためにさらに努めよう。私はそのように考えるようになりました。

 ――とはいったものの、私の生活が劇的に変わることはありませんでした。
以下略 AAS



30:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:06:31.20 ID:TXxgAIfuO
 私も倣わなくてはと、そう考えました。

 しかし、私が昼の休憩に求人のフリーペーパーをめくっていると、セイラムが有無を言ういとまもなくそれを取り上げたのです。

「貴女が働きに出る必要はないからね?」
以下略 AAS



31:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:07:10.35 ID:TXxgAIfuO
 私の顔を見て、セイラムの眉尻が下がります。

「こんな言い分を聞き容れてくれて、ありがとうね」
「……ずるいですわ」

以下略 AAS



32:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:07:41.19 ID:TXxgAIfuO
 できることは限られました。ならば、限られた中で力を尽くすしかありません。私は、食事や清掃の当番を含め、教会の活動における役割を可能な範囲で最大限に請け負いました。

 雇用に身を置くことはできないにしても、できることには励もう。直接の貢献はできずとも、間接的に支えることはできました。こういった分担までもを、あるいはセイラムたちは考えていたのかもしれません。

 共同生活において、私はセイラムと同室でした。
以下略 AAS



33:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:08:14.10 ID:TXxgAIfuO
「それにしても、眠いなあ……ね、今日の合わせ、CD使ってくれない?」

 これは、聖歌隊との練習が午後にあった日のことです。冗談めかして言う彼女に、同じような調子でこたえました。

「心苦しいのですが、ダメです」
以下略 AAS



34:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:08:56.69 ID:TXxgAIfuO
 ――その時間が、このあとにやってくる、嵐の前の平穏であったことを知らずに。


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