40: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:52:14.91 ID:LgMjPCNT0
【三幕 夢を追うなら#1】
目を開けると自室のベッドの上だった。
どうも、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
41: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:54:03.34 ID:LgMjPCNT0
私はもう一度机の前に戻ると、二冊の台本を並べて腕を組んだ。
この二週間、何度も何度も読み返したソレはどちらも相応にくたびれて、
でも、役を掴むための手助けには全くならなくって。……なのに今は。
42: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:55:09.97 ID:LgMjPCNT0
「確かめなきゃ」
本番までの時間は残り少ないけど、
取るべき方法だけは霧が晴れたようにハッキリと分かっていた。
43: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:56:55.82 ID:LgMjPCNT0
サクリと、最初の一挙は拍子抜けするほどにあっけなく。
でも、確かに突き出したシャベルにはひと掬い分の砂が乗って、
地面にも小さな小さな穴が空いた。
44: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:57:50.60 ID:LgMjPCNT0
……だけど、今の私は少し違う。
誰にも見られてないと分かってても、やっぱり人目は気になるし、
とめどなく流れる汗が不快だなんて気持ちにもなる。
45: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:59:05.47 ID:LgMjPCNT0
「――あっ!」
ガツンと、シャベルの先端が何かにぶち当たった。
46: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:00:48.71 ID:LgMjPCNT0
【三幕 夢を追うなら#2】
エレナちゃんに声をかけられた時、
私は自分の作った穴に膝から下を入れるようにして砂浜に座り休んでいた。
47: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:02:13.49 ID:LgMjPCNT0
「もしかして落とし穴でも作ってたのカナ〜? 誰を落とすノ? プロデューサー?」
「まさか! 誰も落としたりしないよ。
……私は少し、役作りの練習。エレナちゃんこそ何してたの?」
48: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:04:25.48 ID:LgMjPCNT0
――目標。そうだ、私にもそれがあったハズだ。
今日この場所にやって来た理由が。
思ってもなかったことに気を取られて、歩みを止めてる時間なんて必要ない!
49: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:05:43.91 ID:LgMjPCNT0
そうして穴を掘っていると、いつの間にかエレナちゃんの姿は消えていた。
多分、砂浜だとリフティングだってやり辛いから、劇場の方まで戻ってしまったんだろう。
痺れた腕を振り上げて、額に流れる汗を拭い、潮風の中で一心不乱にシャベルを振るう。
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