49: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 17:05:43.91 ID:LgMjPCNT0
そうして穴を掘っていると、いつの間にかエレナちゃんの姿は消えていた。
多分、砂浜だとリフティングだってやり辛いから、劇場の方まで戻ってしまったんだろう。
痺れた腕を振り上げて、額に流れる汗を拭い、潮風の中で一心不乱にシャベルを振るう。
正直な話、もう楽しいだとか何だとか、
役作りがどうとかいったこともどうでもよくなりつつあった。
確かなのは一つのゴールだけ。自分の腰の深さまでこの穴を掘る。
できたら今度は胸まで掘る。そこまで行ったら全身が入るぐらいまで掘る!
私は人より不出来な人間だから、きっとそれぐらいしないと見つけたい物を見つけられない。
そこまでやっても何一つ変わらないかもしれない。
でも、最後までやり抜いてみなくっちゃ、
それが正しいのか間違ってるのか判断することだってできやしない!!
「後悔することには慣れっこなんだぞぉ……!」
海水が染み出し、重くなった砂に負けないようにシャベルを持ち上げる。
息が切れて苦しいのは頑張ってる証だと思い込む。
日差しの暑さにだって負けてられない。
自分で自分に「頑張れ!」って心の中でエールを送る。
誰も応援してくれないのなら、せめて私だけは最後まで自分の味方でいてあげなくっちゃ。
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