41: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:54:03.34 ID:LgMjPCNT0
私はもう一度机の前に戻ると、二冊の台本を並べて腕を組んだ。
この二週間、何度も何度も読み返したソレはどちらも相応にくたびれて、
でも、役を掴むための手助けには全くならなくって。……なのに今は。
「……やっぱりだ」
二つを読み比べて気づく。
むしろ、どうしてこんな単純なことに
今まで気づけなかったんだろうと自分の馬鹿さ加減に呆れてしまう。
木無塚さんは確かに言った。「君たちに合わせて本を書き直した」と。
それなのに新旧どちらの脚本も、主人公の行動や台詞には殆ど手が加えられていなかった。
私以外のメンバーが演じる役柄には、多くの変更が入っているのにだ。
(具体的な例を一つ上げるなら、エレナちゃんの役にはリフティングを披露するシーンが追加されていたりした)
これが彼の手抜きで無いとするならば、
木無塚さんはあえて変更を最小限に留めたんだろう。
つまり、それだけ私と雪歩ちゃんには多くの共通点があって、だけど、決定的な違いもあって。
『私じゃハッピーエンドにできなかった』
雪歩ちゃんの言葉を思い出す。
同時に、期待に満ちた顔をして私の前から去ったことも。
……それはもし、もしもうぬ惚れてしまってもいいならば。
彼女は私に、こう言い残したかったんじゃないだろうか?
私なら雪歩ちゃんと同じ役柄でも、この劇をハッピーエンドに導けるって。
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