43: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:56:55.82 ID:LgMjPCNT0
サクリと、最初の一挙は拍子抜けするほどにあっけなく。
でも、確かに突き出したシャベルにはひと掬い分の砂が乗って、
地面にも小さな小さな穴が空いた。
抱いた気持ちは始まりの予感。
それと後には引けないという思い。
地面に刺して、力を込めてすくい、取り上げた砂を穴の傍にドンドン積み重ねて。
淀みなく、リズムよく、手にしたシャベルを振るい続ける。
ザクザクサクリ、サク、サクリ……。そのうちに汗が流れだした。少しずつ息も上がってきた。
だけど眼下の穴はまだ小さく、人ひとりが隠れられるほどの深さもない。
振るう、シャベルを、砂をすくい。振るう、シャベルを、土をどけて。
溢れる汗、砂浜に吹く風が肌に張り付き気持ちがいい。
小さな頃、公園の砂場で遊んでた気持ちを思い出す。
大きな山を作っていた。大きな穴を作っていた。
暗くなるまで、親が迎えにやって来ても、夢中になって続けていた。
――どうして? 楽しかったからだ。
ただ穴を掘るというその行為に、見返りも求めず没頭した。
それだけ私は小さかった。きっと誰もが一度は経験するだろう、幼少期の頃の淡い想い出。
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