20: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:17:28.18 ID:LgMjPCNT0
「……少し見苦しいところをお見せしたね。それで、先ほどの質問を答えようか」
仕切り直すような咳払いを一つ。
身の置き所を探すような口ぶりで木無塚さんは断ると、改めて私たち五人と向き合った。
21: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:18:35.42 ID:LgMjPCNT0
【二幕 壁を掘る人#1】
どうして私が? そう思った。
琴葉さんじゃないの? とも思った。
22: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:20:15.56 ID:LgMjPCNT0
「……こうなったのも半分はお前のせいだからな」
「桃子たちのこともよろしく頼みますよ」
23: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:23:20.40 ID:LgMjPCNT0
『その世界は四方に壁があった』
語り部の声が響く。
24: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:24:39.57 ID:LgMjPCNT0
===
劇は順調に進んでいく。登場人物も次第に増えていく。
街を取り仕切る立場にいる男装の麗人(こちらも私が知ってる人。菊地真ちゃんが演じていた)に、
25: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:26:12.06 ID:LgMjPCNT0
『正気じゃないな』男装の真ちゃんが切り捨てる。
相手を蔑むように見つめながら、
彼女はそれがどれほど馬鹿げた計画なのかを淡々とした口調で指摘する。
26: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:28:01.60 ID:LgMjPCNT0
――これを、演じなくちゃならない。
そう思えば、自然と身震いする体。
27: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:29:05.73 ID:LgMjPCNT0
「みんなで一致団結して穴を掘る。まるで演じる私たちみたいですね〜」
「で、でも。琴葉さんの役が足りませんよね……?」
28: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:30:43.52 ID:LgMjPCNT0
前半じゃ息詰まるように大人しかったバックミュージックは明るく奏でられて、
穴を掘るという演技をする誰も彼もが大変そうでも笑顔だった。
特に、雪歩ちゃんが穴を掘っている時の楽し気な演技と言ったらもう!
29: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:31:42.72 ID:LgMjPCNT0
【二幕 壁を掘る人#2】
「大失敗だったの」
彼女はにこやかに笑ってそう言った。
30: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/07/07(土) 16:32:50.72 ID:LgMjPCNT0
だけど彼女は、私たちが『壁を掘る人』を演じることになったと聞いて
「懐かしいな」と当時を振り返り、「あの劇は大失敗だったよ」というとんでもない言葉で追想に一区切りをつけた。
「失敗?」と、琴葉さんが釈然としない様子で訊き返す。
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