2:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 14:35:14.99 ID:A6rjc17z0
しばらくの間、私は、アイドルとしての活動を行えなくなりました。
オーディション中に、靴紐が切れて転んで、怪我をしてしまったからです。
より高いステップへ進むために、プロデューサーさんが申し込んでくださった大一番での、ミスでした。
3:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 14:38:30.22 ID:A6rjc17z0
「“疫病神”、とも言われている」
事務員さんは、手元の資料に目をやりながら、プロデューサーさんに答えました。
「彼女が所属した事務所は、軒並み倒産に追い込まれている。
半ば都市伝説じみているから、業界でもそれなりに有名だ」
4:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 14:43:24.05 ID:A6rjc17z0
私がこの事務所に来たきっかけも、その子と同じ、スカウトでした。
OL時代、帰宅途中にヒールが折れ、うずくまっていた私に、プロデューサーさんが声を掛けてくれたのです。
何事にも自信を無くしかけていた私を、プロデューサーさんは明るく励ましてくださいました。
5:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 14:46:23.94 ID:A6rjc17z0
当日――。
約束の時間になっても来ないので、彼女を迎えに外に出たプロデューサーさんが、ようやく戻ってきました。
6:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 14:49:22.38 ID:A6rjc17z0
「そんなにも、君の『不幸』は強力なものなのか?」
お茶を出し終えた事務員さんが、お盆を持ちながら壁に寄りかかり、腕組みをしました。
「『不幸』って?」
7:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 14:51:43.30 ID:A6rjc17z0
「今までいた事務所でも……たとえば、プロデューサーが、事故や病気で長期入院してしまったり。
屋外でのお仕事で、雨に降られなかった日は無いですし、レッスンではいつも……」
「……いつも?」
8:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 14:55:06.04 ID:A6rjc17z0
「あながち眉唾物じゃないのかもなぁ」
自分のデスクでコーヒーを啜りながら、プロデューサーさんは一人納得するように呟きました。
応接スペースでは、事務員さんが白菊さんと、契約に関する書類の確認を進めています。
9:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 14:57:26.95 ID:A6rjc17z0
「……え?」
任せる? ――何を?
10:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 15:01:13.30 ID:A6rjc17z0
――――。
小さい頃から、聞き分けの良い子だと、言われて育ちました。
11:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 15:04:52.36 ID:A6rjc17z0
「いえ、あの……現地集合で大丈夫です。道は、調べれば分かりますから……」
「そ、そうですか……?」
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