185:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:32:29.50 ID:CaJ2VfCb0
答えあぐねる俺の様子で何かを察したのだろう。
伯母さんは、うんうん頷きながら頬のあたりを掻いて、
「ちゃんといちゃいちゃしてた?」
186:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:33:40.82 ID:CaJ2VfCb0
「みーくんについて訊くと返事来なくなるのよね」
「あ、わたしもです。めっちゃ話逸らされます」
187:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:34:13.32 ID:CaJ2VfCb0
「……何もないですよ」
「何もって、その何もとはって話になっちゃうけど」
188:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:34:51.00 ID:CaJ2VfCb0
俺がいくら訊いても答えないとわかってからも二人の会話は尽きなかった。
話題が急にあちこちに飛ぶ人たちだから半分くらい聞き流していたけれど、
今からする劇の脚本がオリジナルであることだとか、衣装や小道具作りにかなり凝ったということを言っていた。
189:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:36:52.72 ID:CaJ2VfCb0
【文化祭 1ー6】
水を打ったような静けさの中で、舞台の幕が上がる。
190:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:37:51.13 ID:CaJ2VfCb0
前まではこうではなかったんです、と「わたし」は言う。
そして顔を俯かせ、消え入りそうな声で、
「それがどうしてなのかも、何一つわからないんです」
191:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:39:33.03 ID:CaJ2VfCb0
「こんなことに意味なんてないのかもしれないです。──けれど、こうしていないと怖くてたまらなくなるんです」
「忘れたいことばかりでも、わたしは忘れたくはないんです。何の面白みのないようなことでも、それは変わりません」
「あなたがいたときのこと、わたしはもう覚えていません。楽しかった、という朧気な印象しか残っていません」
「だから──そういうふうになってしまうなら、何もないことよりは、何かがあった方が少しでも救われるんじゃないかって考えてしまうんです」
192:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:40:17.42 ID:CaJ2VfCb0
場面が切り変わる。
彼女が目を覚ますと、顔を上げた方向から陽が注いできていた。
その光に誘われるままに部屋から出る。
193:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:40:53.75 ID:CaJ2VfCb0
「ここの家の子なんだ」
「……はい」
194:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:41:24.42 ID:CaJ2VfCb0
「……え、ダメ?」
「……お、お好きにどうぞ」
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