189:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:36:52.72 ID:CaJ2VfCb0
【文化祭 1ー6】
水を打ったような静けさの中で、舞台の幕が上がる。
ナレーションが終わると同時に、奈雨の演じる少女──「わたし」が舞台上にやってくる。
緊張をほぐすためなのか、もう演技が始まっているのか、奈雨は衣装の胸のリボンを軽く摘まんで息を吐き、客席に向けて儚げに微笑する。
目を閉じ、開き、左右に首を巡らせる。
その視線が、一瞬だけこちらに向けられたように思えた。
物語は「わたし」のモノローグを中心に展開していく。
陽の射さない部屋。少しばかり広い屋敷の、以前まで使用人が住んでいた一室に「わたし」は居る。
家族は「わたし」のことを腫れ物のように扱っていた。
母と父は彼女を壁一枚隔てたような、他人行儀な振る舞い方をし、たった一人の姉は彼女と関わること自体を避けているようだった。
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