190:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:37:51.13 ID:CaJ2VfCb0
前まではこうではなかったんです、と「わたし」は言う。
そして顔を俯かせ、消え入りそうな声で、
「それがどうしてなのかも、何一つわからないんです」
彼女は自分を責めた。そうされた理由がわからなくとも、どこか自分に悪いところがあるのだと思って。
食事の際には、彼女の姿が見えるとすぐにそれまでの談笑が止み、部屋をあとにするとまた楽しげな声が耳に届く。
休日になると家族は彼女を置いてどこかへ出かけていく。彼女は屋敷で一人過ごす。
唯一話をしてくれていた人もここから居なくなってしまった。あまり大きいとは言えない部屋には無機質な家具のみが残っている。
長期的にそんな状態が続けば、家族の一挙一動に対して恐怖に似た感情を抱くことになる。
食事も外出も何もかもを一人でするようになる。頼れる誰かなどいないのだから。
家族に笑っていて欲しい、というのは建前で、本心ではただ辛いだけだった。でも、そうすることが最善だと思わざるを得なかった。
毎日夜が更けてくると、「わたし」は椅子に浅く座り、手に持った人形にその日あったことを詳らかに話す。
341Res/257.77 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20