38:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:27:43.63 ID:QxgIwWOp0
東京という街は人の多い街でした。
ホームに降りてから見渡す限りの、ひと。ひと。ひと。
私はこんな街でこれから過ごしていけるのかと、すぐさまアイドルになったことを後悔しました。
39:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:30:57.24 ID:QxgIwWOp0
「じゃあまた明日、事務所でな」
タクシーが寮へと着くと、
プロデューサーさんは私の荷物をトランクから玄関まで軽々と運び、事務所の方へと歩いて行きました。
40:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:32:02.07 ID:QxgIwWOp0
整理をしながら、それでも私は、
東京の街に来たことを、一人で寮暮らしを始めたことを、まだ楽しみに感じていました。
母の目もなければ、クラスメイトの目もありません。
41:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:34:01.13 ID:QxgIwWOp0
また、東京で私を知っている人なんて、それこそプロデューサーさんくらいでした。
ですから、仕事の予定が入っている日以外は、部屋に引きこもり、漫画や本を読んで暮らしていよう。
そう決心し、整理を終えると、私は早速ベッドの上で漫画を読み始めました。
42:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:35:17.67 ID:QxgIwWOp0
次の日からアイドルとしての本格的な生活が始まりました。
私は、レッスンやプロデューサーさんとの会議の十分前には、
レッスン室の前や会議室の前に設けられたソファに座るよう心掛けていたのですが、
43:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:36:18.60 ID:QxgIwWOp0
肝心のレッスンは、幸いにも私の担当となったトレーナーさんが裏表もなく、
天使のように優しい人だったので、気が楽でした。
トレーナーさんが難しいステップを踏んで、それを見た森久保が、
44:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:38:06.20 ID:QxgIwWOp0
しかしそれは、個人として見た場合のみでした。
月に何回か合同練習といって、他のアイドルたちと一緒に練習をする機会があったのですが、
隣で踊るアイドルとの距離感、タイミングというものが
45:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:40:12.02 ID:QxgIwWOp0
「色々考えた結果、グループデビューではなく、ソロでデビューさせることにしたぞ!森久保ォ!」
会議室でプロデューサーさんは私にそう告げました。
出会った頃は乃々ちゃん呼びだったプロデューサーさんも、
46:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:41:33.03 ID:QxgIwWOp0
「あの……デビューしないという手はないんでしょうか?
森久保はデビューしたいなんて一言も言ってないんですけど……」
「デビューしないアイドルなんて見たことあるか?」
「ないですけど……」
47:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:52:04.25 ID:QxgIwWOp0
「ほら、覗いてみろ」
プロデューサーさんが机の下を指さすので、私はおばけか猫でもいるのかと、恐る恐る机の下を覗き込みました。
そこには銀髪の、私と同年代くらいの女の子がいました。
48:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:53:36.34 ID:QxgIwWOp0
私はこのとき人生で初めて、親近感のような感情を覚えました。
輝子さんが内気だったから親近感を覚えたというわけではありません。
私の短い人生にも何人か内気な人は登場してきましたが、
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