北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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21: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:28:15.73 ID:vyCd+JK40
 さて、もうひとり。

 チラチラとこちらの様子をうかがっている影に向けて、「乃々ちゃんも、おいで」と呼んでみた。

「あの、その、もりくぼは……」
以下略 AAS



22: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:34:24.18 ID:vyCd+JK40
 月末になったらCGプロの給料が入る。
 その日アタシは事務所に行く前に、ちょっと使い道でも考えておこうと思ってデパートに立ち寄った。
 14万円というのは、高校生からするとなかなかの大金だ。本当にこんなのでお金をもらっちゃっていいのかな、と思う気持ちもなくはないが、CGプロほどになれば、きっとこの程度の金額は誤差みたいなものだろう。
 化粧品コーナーをながめ終えて、服や小物のショップを物色して歩いていたとき、ある一角にステージのようなものが作られているのが見えた。お世辞にも立派とは言えないような簡素なステージで、その前には客席ということらしいパイプ椅子が並べられていた。椅子は20脚ほどあったけど、座っている人はいない。

以下略 AAS



23: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:36:40.83 ID:vyCd+JK40
     *

 体質が奇跡的な改善を見せ、体の調子は格段によくなったけど、それでなにもかもがうまくいったかというと、そうでもない。
 ようやくまともに通えるようになった学校生活は、アタシにとって、決して楽しいものではなかった。

以下略 AAS



24: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:38:47.51 ID:vyCd+JK40
 翌日、学校に到着するなり担任の教師から職員室へ行けと言われた。ホームルームは出なくていいということらしい。
 職員室に入ると生活指導の教師が、「昨日は悪かった」と言って頭を下げた。ようするに、騒ぎにはしないでほしいということだろう。

『人に頭を下げる時ぐらい、帽子を取ったらいかがですか』なんてセリフが頭に浮かんだけど、形だけにしろ謝罪している人に言うことじゃないと思って飲み込んだ。
 だけど、「いいですよ、気にしてませんから」なんて言いたくはなかった。女の顔を叩いておいて、そう簡単に許されるなんて思ってほしくなかった。
以下略 AAS



25: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:40:22.93 ID:vyCd+JK40
 どこをどう歩いたのかもわからない。
 あるいは走っていたのかもしれない。
 気付けばアタシは事務所に来ていた。

「あったよ、ハチミツが!」
以下略 AAS



26: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:41:29.68 ID:vyCd+JK40
 更衣室に案内され、事務所で貸し出しているレッスン着に着替える。それからレッスン室に入ると、まだ時間には余裕があるはずなのに、すでにたくさんの人がいた。
 アタシは後ろの隅のほうに陣取り、ひとりで周りを真似てストレッチをした。我ながらびっくりするぐらい体が固かった。
 ほどなくして、黒髪を低いサイドテールにした女性が入ってきて、部屋にいる人たちが整列した。あの人がトレーナーさんということらしい。

「まず私がやって見せるので、みなさん同じように動いてくださいね」
以下略 AAS



27: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:43:10.18 ID:vyCd+JK40
 多人数のダンスレッスンは、平日は毎日行われていた。
 次の日、また次の日も、アタシはこのレッスンに参加した。そして、いつも途中でプロデューサーがやってきてストップをかけた。「まだできる」とアタシがいくら言い張っても、半ば強引にレッスン室を追い出された。
 歯痒かった。疲れ果てていたのは確かだけど、アタシはもっとレッスンをしたかった。もっと早く、追いつきたかった。

 ある日、レッスン開始から数十分経過したころ、「おじゃましますけど……」と言って、乃々ちゃんがレッスン室に入ってきた。
以下略 AAS



28: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:44:45.38 ID:vyCd+JK40
 にっこりとほほ笑んだトレーナーさんが、ラジカセの再生ボタンを押した。
 流れ出したのは、レッスンに使っていたのと同じ音楽だ。乃々ちゃんがおどおどと踏み始めるステップも、さっきまでアタシがやっていたのと同じもの――だけど、
 これが本当に同じものかと思った。
 初心者用の簡単なダンス、そのはずなのにアタシは、いや、この場にいる全員が、乃々ちゃんから目を離せなくなっていた。
 レッスンでトレーナーさんが手本として見せていたのは、定規で測ったような正確なダンスだった。乃々ちゃんのはそれとは違い、なんとなく、ところどころに若干のズレ、揺らぎのようなものがある。だけど直感的に、その揺らぎこそが目を離せなくなる要因だと思った。
以下略 AAS



29: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:46:23.13 ID:vyCd+JK40
 次の日は杏がやってきた。
 そのときはちょうど休憩時間だった。もしかしたら休憩になるのを待っていたのかもしれない。

「おー、ヘバってるヘバってる。加蓮ちゃん帰るよー」

以下略 AAS



30: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:47:14.68 ID:vyCd+JK40
「……努力は無駄ってこと?」

「努力ねー」

 杏はあざ笑うように口元をゆがめた。
以下略 AAS



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