24:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 11:59:52.05 ID:sxZEr0ye0
言葉を口に出すのが怖かった。
覚悟を問われるのが嫌だった。
責任を負うのが面倒だった。
25:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:01:13.05 ID:sxZEr0ye0
そこからは怒濤の日々で、あまりよく覚えていない。
寝る間を惜しんで仕事をして、眠気を通り越して気絶するんじゃないかと思うときもスタドリで体に鞭を打ちながら、やるだけのことをやった。
先輩から段取りやスケジュール管理など基本的なノウハウのアドバイスを貰いに行った。
26:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:15:17.09 ID:sxZEr0ye0
蘭子と一緒にいる時間も長くなり、自然と会話も増えていった。
「学校ではどんな感じなんだ」
「聖獣が如く寵愛を受け、我が進軍に賛美歌の調べが響いているわ」
27:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:15:49.91 ID:sxZEr0ye0
少しずつわかってきたこともある。
蘭子の言葉にはちゃんと意味があり、要所要所を押さえれば会話にそんなに支障は出ないこと。
『闇に飲まれよ』が『お疲れ様です』という意味であること。
28:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:16:30.22 ID:sxZEr0ye0
真っ赤なリップを塗った唇をきゅっと結んで、ちらちらとこちらを見てから、ゆっくりと伝えてくれた。
「えと……その方が、話しやすい、から」
「……そっか。それならそれでいいんだ」
29:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:17:42.27 ID:sxZEr0ye0
「下界の者の言葉を使えとは言わないのか? 我が闇の言葉は、心の鎧だ。弱い心を強い幻想で覆う鎧だ」
「蘭子がその方がいいって言うなら、蘭子が蘭子らしくいられるなら、そのままでいいよ」
蘭子はかっこいい語句を使うのが好きで、でもそれは会話が成立しにくいことも自覚してて、それでもなお好きだからこのしゃべり方をする。
30:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:18:38.72 ID:sxZEr0ye0
嵐のように過ぎ去っていく日々も、大変だけど不思議と楽しかった。
「……で、これが完成した衣装だ」
「おお! 堕天使の衣か!」
31:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:19:54.69 ID:sxZEr0ye0
なんとか捩じ込むような形で、デビューライブの仕事は取れた。
ハコも小さく、今日デビューする新人アイドル達の一人という扱いだけど、こちらはやりたいようにやるだけだ。
蘭子がパフォーマンスをすれば、きっとそこは堕天使降臨の儀式の場となるはずだ。
32:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:20:32.78 ID:sxZEr0ye0
さあ、次は蘭子の番だ。
「今宵は聖誕祭。ミサの幕開けよ」
バッ、といつものように腕を突き出し、こちらに掌を向けるポーズ。
33:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:21:19.46 ID:sxZEr0ye0
「……禁断の舞台……下僕達に言霊は通じるのか?」
力ある眼はそのままであるが、やはり表情は堅い。
ああそうだ。
34:名無しNIPPER
2017/11/16(木) 12:22:04.68 ID:sxZEr0ye0
「蘭子は、最高のアイドルになれる」
普通じゃないって、怖いよな。
だからこそ、ありのままの、蘭子が格好いいと思えることを、自由にさせてやりたい。
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