37:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:54:02.31 ID:WUZ1iABd0
下界に降りて、天界では考えられないほどいろんなことがあって。
楽しいことも悲しいこともあって、全部乗り越えて成長したと思っていたけれど、本当の私は弱いままだったんだと実感する。
悲しみも痛みも、癒せるような天使になれればいいななんて思っていたけれど、一番みんなに癒されていたのは私なんだ。
38:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:55:25.30 ID:WUZ1iABd0
「……寂しいよ」
「みんなに、会いたいよぉ……」
39:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:58:44.25 ID:WUZ1iABd0
思わず声が漏れた。自分のものとは思えない、弱弱しくて小さな声。
最後のほうは、かすれてほとんど聞こえないほどだった。
声に出してしまったらだめだ。小さな穴が空いたダムのように、そこから感情があふれ出してしまう。
40:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 16:59:38.32 ID:WUZ1iABd0
「ガヴ、そろそろ帰らないと夜になっちゃうわよ?」
そう、夜。夜の月を見ると、こんな風な優しい声のあいつを思い出してしまう。
「そうよ、風邪でも引いたら勝負ができなくなるじゃないの!」
41:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:00:22.51 ID:WUZ1iABd0
「……で、いつから見てたんだよ」
私はむすっとして不機嫌を装って聞く。
「ガヴちゃんがタプちゃんたちと別れたところからですね。てっきりおうちに帰るものだと思ってましたが、ルートが逸れたので千里眼で続けて見ていました」
42:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:01:07.90 ID:WUZ1iABd0
「それで?どうしてみんなして私を監視してたのか、理由を聞かせてもらおうじゃん」
「監視だなんて……まあそう言われても仕方ないか。ごめんね、最初はもっと早く会いに行くつもりだったのよ」
「みんなで集まって、私の千里眼でガヴちゃんのいる場所を見つけて、久しぶりに顔をお見せするつもりでした」
43:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:01:53.73 ID:WUZ1iABd0
「私さ、一人でもやっていけるって思ってたんだよ。実際下界に降りた頃は一人で生活できてたし」
「……」
「ヴィーネ、そこで微妙な顔をするな!……まあとにかく、みんな実家に帰っても全然平気だと思ってたんだ」
44:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:02:38.00 ID:WUZ1iABd0
夕日に染まった海を見渡しながら話を続ける。
「この海、覚えてるか?前にみんなで来たことあるだろ」
「ええ、しおりまで作ったんだもの、覚えてるに決まってるじゃない」
45:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:03:26.11 ID:WUZ1iABd0
「そうだ……私の悲しみとか痛みとか、そういうもの全部を癒して救ってくれるのは」
「……お前たちだけなんだよ」
46:名無しNIPPER
2017/09/14(木) 17:05:47.04 ID:WUZ1iABd0
全部言い切った。達成感と、解放感。
だけど、この視線と沈黙は……
「……なんだよ。なんか言えよ、お前ら」
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