22:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:05:05.28 ID:pXJ6Ifkk0
「というわけで、完成! 大作だね、肇ちゃん」
「は、はぁ……」
いざ、見直してみると、何だかごちゃごちゃと、よく分からないものになってしまいました。
23:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:09:35.91 ID:pXJ6Ifkk0
「……えっ!?」
「Pさんからこっそり聞いたんだ、肇ちゃんの誕生日」
夕美さんは、さっきまで自分で作っていた生け花を、そのまま私に差し出しました。
24:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:12:40.47 ID:pXJ6Ifkk0
ここまでされたからには、私も何かお返しをしなくては気がすみません。
「夕美さんの誕生日、教えてください。今度は、私が自慢の作品をプレゼントする番です」
「あー、んーとね。私の誕生日もう過ぎちゃった」
25:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:16:44.30 ID:pXJ6Ifkk0
実は、実家には月に一度、定期的に帰っていました。
アイドルになることを許したとはいえ、おじいちゃんはまだ、私に後を継がせたいのです。
私の技量が落ちることの無いように、工房に呼ばれては一緒に土をこねます。
26:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:18:32.89 ID:pXJ6Ifkk0
「わ、私、こんな格好で良かったのかな……?」
工房に着くと、夕美さんは小声で私に耳打ちしました。彼女は、いつものスカート姿です。
「今日夕美さんに作ってもらうのは簡単なものなので、そんなに汚れないと思いますよ」
27:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:20:37.19 ID:pXJ6Ifkk0
陶芸教室でよくご案内するのは、湯呑みやお茶碗、お皿――男の人だと、ぐい飲みなどもあります。
夕美さんは、お茶碗を選びました。
28:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:23:04.76 ID:pXJ6Ifkk0
「私は、先生ではありませんよ」
「冷静に返さなくていいじゃん、もう〜。あはは」
夕美さんは恥ずかしがるように笑いますが、とても良い出来です。
29:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:24:54.73 ID:pXJ6Ifkk0
夕美さんに、もう一つ何か作ってみることを提案しましたが、彼女は断りました。
私が作業している様子を、間近で見ていたいのだそうです。
動画も撮ると言いだして、ちょっと困りましたが――渋々、了承しました。
30:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:29:26.95 ID:pXJ6Ifkk0
何より、今回は夕美さんにプレゼントするためのもの。
夕美さんにおさまる花瓶の姿――。
お花でいっぱいのあの部屋、その中に置かれる場所、使ってもらいやすい形状――。
31:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:33:11.23 ID:pXJ6Ifkk0
――――。
――――――。
32:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 20:35:03.12 ID:pXJ6Ifkk0
焼き物は、ろくろで成型する場合、その多くが左右対称の形状をとります。
お茶碗もお皿も湯呑みも、決まった向きが無い方が使いやすいというのもあるかも知れません。
特に備前焼は、日常生活の中で長く使われるうちに人の手に馴染み、深みが出る陶器でもあります。
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