77:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:13:13.14 ID:xy6mxyet0
「五月雨、大丈夫か。何かすごいすりむいたみたいだけど……」
「あ、いえ、大丈夫です! こんなの入渠すればほほいのほいですから!」
そういうと、五月雨はいそいそと、階段を降りて入渠施設へと走っていった。
「あ、五月雨ちゃんただいま〜。あれ、スカートに血ついてるけど大丈夫??」
「う、うん、大丈夫! 今から入渠してしてくるから!」
78:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:14:12.77 ID:xy6mxyet0
それから十五分くらいして、司令室をノックする音が。
「どうぞ」
「五月雨です! しつれいしますね」
そう言って五月雨が部屋に入ってくる。
79:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:14:41.15 ID:xy6mxyet0
と、「北上入るよ〜」の声とともに、こんどは妹が司令室に入ってきた。
「あ、五月雨ちゃんも来てたんだ〜。司令官、机の引き出しに入ってた吹雪ちゃんのもの持ってきたよ〜」
そう言って、妹は紙袋を私の執務机の上に置く。
「そういえば、私も吹雪さんのケッコン指輪返しにきました! 司令官、ありがとうございます!」
北上に続き、五月雨もスカートのポケットからケッコン指輪の小箱を私に差し出した。
80:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:15:35.03 ID:xy6mxyet0
「あ、そういえば、司令官。吹雪ちゃんのネックレスって、もしかしてもう持って行った?」
北上がふいとそんな事を尋ねた。
「ネックレス? そんなもの持って行ってないよ。だいいち、部屋に鍵かかってるから私は入れないだろ」
「そうだよね〜。今朝みたときは確かにあったはずなんだけど〜。五月雨ちゃんは知らない?」
「北上さんからネックレスの話は聞いたけど、私は知らないよ。どんなものかもまだ見てないし、部屋に入る鍵もないもの」
81:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:16:54.88 ID:xy6mxyet0
「あ、明石中佐? もしかして、北上の部屋からネックレスを持っていったりした?」
「持って行ってないですよ。そもそもそういうの興味ありませんし。でもなぜ?」
「いや、指輪の件で、ほかにも防身銃と腕時計とネックレスが今朝まではあったんだが、ネックレスがさっき見たときは無くなってたから……」
「そうですか。まあ、私は前任司令官時代からいたから少佐は疑ってるのでしょうが、私は本当に知りませんよ。
それに、さっきまで一緒に北上さんの演習を一緒に見ていたじゃないですか」
82:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:17:33.52 ID:xy6mxyet0
私はそれから二人を退出させ、柱島に指輪の件について電報を打電した。
すると直ぐに返電があった。
『そういう報告を待っていた。
ついては本日十三時より、本泊地人事部と貴泊地司令官との電話会談を求む。
猶、会談内容は秘匿事項もあるので外部に漏れない様注意せよ』
83:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:18:41.20 ID:xy6mxyet0
十三時、私は二人に泊地近海の対潜哨戒任務を命ずると、司令室の内鍵を閉めて、柱島泊地の人事部に電話を入れた。
向こうは直ぐに出た。
「はい、こちら、柱島泊地人事部の海城工(かいじょう たくみ)と申します。五神島泊地司令少佐でよろしいでしょうか」
若い男性の声が受話器越しに聞こえる。なかなかのイケボイスだ。
84:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:19:28.53 ID:xy6mxyet0
私の質問に対し、海城は少しの間、沈黙した。
「……えっと、失礼しました。
取り敢えず、それらはこちらで預かりますので、明日にでも宇和島基地から輸送艦を送り、回収することにします。
ですが、正直なところを申しますと、吹雪大佐のもとへ返すことはできません」
「な、それはなぜ? あと、吹雪大佐ということは、昇進されたのですか?」
85:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:20:41.54 ID:xy6mxyet0
その時だった。
「はい、吹雪大佐は昇進されました。――――轟沈後に」
「え?」
私は海城の回答に反射するように、ため息のような疑問符を吐いた。
「轟沈されたのです。吹雪大佐は」
86:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:22:13.38 ID:xy6mxyet0
「なるほど。やはり、この司令部はいわく付きだった訳ですか。
そして、北上が着任した日の電報に、『司令官は、毎日一度は本人事部に泊池の状況を報告・打電すること』と言ったような命令をしたのは、貴職が『その事』について調査しているからなんですね」
「ええ、その通りです。これについては今後も、続けて頂きたいと思います」
「分かりました。それならば、私も『その事』について知りたい。覚悟はできています。そして、出来る限り協力したい所存です」
「それは助かります。では、貴殿が着任する二ヶ月前の五月十日に起きた『豊後水道沖夜戦事件』について話していきます」
87:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 23:22:54.91 ID:xy6mxyet0
「はい。事件を簡単に説明すると、当時の五神島司令が作戦遂行中に失踪し、本泊地に所属していた七隻の艦娘のうち六隻が豊後水道沖で轟沈した事件です」
驚愕。
私がここに着任する前にそんな悲惨な事件が起きていたのか。
そして、その七隻のうち生き残った一隻というのが、非戦闘艦である明石中佐と言う事は言われなくても分かった。
中佐はそんな辛い過去を背負っていたのか……。
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