【艦これ】「泊地を継ぐもの」
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21:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:05:19.59 ID:5FDHqpH0O
「そういえば、今日の五月雨のトマトシチューは美味しかったですね。あなたはどうでした?」
 急に明石は話題を変えて、夕飯の話をはじめた。というか、明石も五月雨の夕飯を食べていたのか。通りで量が多く作られていた訳だ。ではなぜ、そう言わなかったのだろう。
「ああ、美味しかったよ。あと、ここでは司令官は一人だから私のことは司令と呼んでくれてもいいんだよ」
「いえ、あなたは私からすれば司令じゃないので……それにあなたは少佐でしょう?」
 鼻につくような言われかたをされ、少々私は苛立ちを覚えた。
以下略 AAS



22:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:05:49.67 ID:5FDHqpH0O
「――中佐ですが」
 な、中佐だと。まさか私より階級が上の者がこの司令部にいるとは……。
「……申し訳ない、です。ならば、私のことは少佐とでも呼んでください」
「ええ。私のことは中佐とでも明石中佐とでも呼んでくださいな。あと、あなたは此処では司令なのですから、私にはタメで大丈夫ですよ」
「ああ、助かるよ。明石中佐。それで早速なんだが、中佐に建造を頼みたい」
以下略 AAS



23:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:06:20.70 ID:5FDHqpH0O
 そう、これは島風や雪風、また、育つと強い阿武隈や由良、摩耶などが出るレシピである。着任したときに上官から聞けた唯一のレシピだ。
「最初から飛ばしてきますねー。最初は無難に30・30・30・30じゃないんですね」
「ああ、最初から狙っていくのが大事だ」
「了解です、それでは待っていてくださいな」
 明石中佐はそういうと、工廠に備え付けられている一室に戻っていった。ロシアンブルーもその後に続く。部屋の前で猫は立ち止まると私に顔を向ける。一瞬右目が煌いた様に見えた。その後直ぐに部屋の中へとするりと入っていくのであった。どうやら彼女らはここに住んでいるようだ。


24:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:06:50.69 ID:5FDHqpH0O

 翌朝、あんなにあったトマトシチューは既になく、私は五月雨が作ってくれたご飯と味噌汁、塩鯖を頂いた。今日も多くつくられていたが、明石を入れても鯖の数が二尾多いなと思った。
「明石中佐って大食いなのかい?」
「え! あ、そうですよー! 明石さんはいっぱい食べる方みたいです」
「ああ。でも、なんで昨日、明石中佐がいることを教えてくれなかったのかい?」
以下略 AAS



25:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:07:28.30 ID:5FDHqpH0O
「工廠も艦娘たちにとっては、神聖というか絶対領域というかんじです。艤装をつけるときに着替えたりもしますから……」
「そうか……規律には特になにも書いてないからいいとは思ったのだが……」
「規律ではなく、慣習というか司令官としてのマナーだと思います」
 五月雨はそうはっきりと言うと、ご飯を平らげた。
 なんか、悪しき慣習のようにも思えた。が、仕方があるまい。女の子にも見られたくないところがいっぱいあるのだろう。そうでなくても、最近はセクハラとかで退任に追い込まれる司令官も多くいると聞く。私自身も気をつけねばと気を引き締めた――。


26:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:07:58.90 ID:5FDHqpH0O

 午前、司令室で執務を執っていると、桟橋に小船が着いているのが見えた。すると、一人の女子が降りてきた。後ろを太く三つ編みした女子である。なるほど、彼女が新しく着任する艦娘か。
 建造のことはよく分からないが、どうやら明石中佐は海軍工廠本部にレシピを伝達し、本部はこの司令部に見合った艦の艤装の生産を命令して、適合者を送るようである。そんな訳で残念ながら見たところ、雪風や島風ではないし、由良や阿武隈、重巡洋艦クラスという感じでもなかった。まぁ、当たり前だが、素人司令部にしょっぱらからそんな優秀な子を送るはずはないのだ。
――にしても、どっかで見たことのあるような気がした。


27:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:08:46.53 ID:5FDHqpH0O

 コンコンコン
「どうぞ」
「失礼しま……えええええ!」
「はい? あああああ」
以下略 AAS



28:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:09:25.16 ID:5FDHqpH0O
 妹は艦娘の制服を着ているとは言え、私自身も着任したばかりだから、まだちょっと見分けがつかないのだ。
「えー。昔、私が船になって戦う夢のことをよくお兄ちゃんに話してたと言うのに??」
「あー、そういえば、そんなこともあったな。よく見ててうなされた夢だろう。でも、それだけじゃ分かんないよ」
 そういえば、妹は小学生のころ一時期、船になって敵の船や飛行機と戦ったり、潜水艦を船から落として罪悪感に駆られたりする夢にうなされている事をよく私に話してくれた。艦娘はよく自分がなっている艦の一部の記憶を持っていると言うが、妹もまさにそういうことなのだろう。
「私はね、スーパー北上さまだよ☆」
以下略 AAS



29:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:10:09.85 ID:5FDHqpH0O
 妹は北上か……。噂によれば、成長するととても強力な雷撃が出来ると聞いたことがある。妹にしてはなかなかやるじゃないかと私は感心した。それに初期戦力としては十分だろう。
「で、北上、お前が持っている封筒はなんだい?」
「あ、そういえば忘れてたよ。上官命令でここに着任したら司令と読んでって」
 そういうと妹は、私に茶封筒を渡した。
「北上はもう読んだの?」
以下略 AAS



30:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:11:12.13 ID:5FDHqpH0O
 そう言って、私は茶封筒を空け、中に入っていた一枚の紙を取り出した。内容は次の通りであった。
「秘 発呉鎮守府柱島泊地人事部 着五神島泊地司令部少佐 五神島泊地司令部少佐及び軽巡洋艦北上に対し、次の事を遵守することを命ず。
 一、両者は兄妹関係にあるが、それを外部に分かるような行為は必ず控えること。
 二、両者はお互いを必ず信じること。
 上記を遵守できないことが判明した場合、双方の解職もあり得るので注意して職務を全うされたし。なお、本書類は自身の手帳等他人に見られない媒体に記録したのち必ず読めない状態にして廃棄する事。以上」
以下略 AAS



31:名無しNIPPER
2017/08/08(火) 13:12:02.01 ID:5FDHqpH0O
「あと、北上、馴れ馴れしい話し方すると、ばれるかもだから、さ……」
「えー、これがアイデンティティだからそこはゆずれないね。まぁ、気をつけるさ」
 そういうと、北上はスマホを出して、文書をカメラで撮ると、私から離れた。私も同じくスマホで文書全体を撮って保存した。
「あ、あれ、ここにはシュレッダーないのか。仕方ない破って捨てるか」
 そう呟き文書を細かく破るとゴミ箱に捨てた。
以下略 AAS



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