50:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:39:44.61 ID:55jPn/3I0
――初めから、島村卯月として造ってくれたのなら、こんなことを考えることは無かったと思います。
「プロデューサーさんは、私を『島村卯月』の人格を与えませんでした」
「恨んでる?」
51:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:40:26.80 ID:55jPn/3I0
私の存在は極めて不安定です。
今、考えていることだって、作られたものであるかもしれない。
でも、この心はプロデューサーさんの憧れから生まれたもの。
纏う存在には、オーハシさんが作ってくれた『島村卯月』が詰まっている。
52:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:41:57.17 ID:55jPn/3I0
そう在るように選ばせてくれたことに感謝します。
選んだという事実が、確かに私の存在を定義してくれます。
だから、確かめに行ってきます。
あの人から託された、大きな力を借りて。
53:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:43:00.16 ID:55jPn/3I0
腕を振り、服を翻す。
馬鹿にみたいに現実的に計算された衣装の物理演算は、現実のものとまったく遜色ありません。
そう、ここに在るものはすべてが本物。心も体も、すべてが『アイドル』です。
さあ、いきましょう――『島村卯月』
54:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:43:47.99 ID:55jPn/3I0
「――はじめまして」
この『声』は、あの人から受け継いだ、大切な誓いだから!
「島村、卯月ですっ!!」
55:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:44:27.86 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
日々は、過ぎていきました。
最初は、あんまり好意的でない人も居ました。
56:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:44:59.11 ID:55jPn/3I0
私は、どこまでいけるのだろう。
私は、いつまでアイドルで居られるのだろう。
『島村卯月』は、どこまでアイドルで居られるのだろう。
57:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:46:42.63 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
透明な大地が、地平線の果てまで広がっています。
真っ白な道が、地平線の向こうまで続いています。
その道には、沢山の分かれ道があって、それぞれが見渡せないほど遠くまで続いていました。
58:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:47:17.98 ID:55jPn/3I0
もう、いいんじゃないのかな。そう思いました。
だけど、まだいけると思いました。
みんなと一緒なら進めると思っていました。
だけど、一人になっても、進んでみたいと思いました。
59:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:47:57.83 ID:55jPn/3I0
「辛いですか?」
影法師の問いかけは容赦がなくて、『島村卯月』もちょっと困ってしまいます。
「ちょっとだけ……」
60:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:49:00.11 ID:55jPn/3I0
振り返った先には、今まで歩んできた道。
何も無かった大地に足跡を刻む。そこには、眠っていた種子が宿っていた。
私は歩み、それを起こしただけ。
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