26:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:16:55.16 ID:55jPn/3I0
泣いているような、笑っているような、よく分からない顔をしていました。
私が人間なら、それを上手く定義できていたかもしれません――
ただ、分かるのは、プロデューサーさんは、何かを諦めていませんでした。
それを知ったうえで、何かを信じている。
27:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:17:29.22 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
その日、『島村卯月』と彼女は言いました。
「私は、引退します。けれど、『島村卯月』はまだ、ここに居ます」
28:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:18:38.40 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
――夢を見ました。
美穂ちゃんの声が、急に変わりました。
29:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:19:24.51 ID:55jPn/3I0
だけど、離れられなかった。
私の中の、『島村卯月』が言っていた。
終わりたくない。
30:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:20:07.49 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
日本時間で朝になったのを確認すると、すぐにプロデューサーさんに連絡をします。
私のメッセージを受け取ったプロデューサーさんは、慌ててネットワークを閉じると、すぐに駆けつけてくれました。
31:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:21:31.24 ID:55jPn/3I0
「もちろん、演者を使ったアイドルは一度失敗している。だけど……あまりにも方法が不完全です」
『島村卯月』として私を造らずに、一から教育したこと。
そして、最後まで決断を私に委ねたこと。
32:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:22:29.25 ID:55jPn/3I0
「それはね――」
そう告げると、プロデューサーさんは急にスーツのジャケットを脱ぎだします。
「ふえっ」
33:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:24:20.23 ID:55jPn/3I0
「私は、アイドルになりたかったんだよ――カワイイ、女の子になりたかったんだよ」
「えっと、それは……」
聞き返すと、プロデューサーさんは、昔話をしてくれました。
34:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:25:13.25 ID:55jPn/3I0
「『島村卯月』が居なくなった時、泣いた。もう、彼女に会えないのかと、絶望した」
だけど、プロデューサーさんは止まらなかった。
「諦めたつもりだったけれど、その夢は捨てきれなくて――だったら、自分の理想のアイドルを造りたいと願った」
35:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:26:05.38 ID:55jPn/3I0
この人は、歪んだ夢を、まっすぐに追いかけてきたんだって。
諦めないで、ここまで来たんだって。
「え、ええっと」
36:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:26:46.81 ID:55jPn/3I0
ハッとしたように、プロデューサーさんは目を見開く。
少しだけ、潤んでいるように見える瞳。
「――そうね」
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