761: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 21:46:00.22 ID:ymR8HEsBO
火災警報によって永井が眼を覚ます四時間前、杖をついた男がゆっくりと歩きながら検問ゲートまでやってきた。
暦の数字はすでに秋の季節に入り込んでいたが、気候はそのことをまったく気にせず引き続き夏の暑さをそのままにしていた。
762: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 21:47:42.66 ID:ymR8HEsBO
奥山「この配線じゃノイズで速度が二十パーセント落ちるよ」
763: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 21:49:11.09 ID:ymR8HEsBO
奥山はライターを点けた。ゴミ箱の紙束にはオイルが振りかけられていて、油が染み込んだところの黒っぽく変色していた。インクが滲み、文字が溶けてゆく。奥山がライターを手放す。落ちていく際、ライターはくるりと下を向き、回転にあわせて火が揺らめいた。そのせいで火が消えてしまうのではないかと錯覚するほど赤っぽいオレンジ色の光熱がか細く揺らめいたが、ライターが紙束に落ちたとたん火は炎となって燃え上がり、あらかじめ仰け反ってゴミ箱から離れていた奥山の顔に熱気をぶつけた。
フォージ安全社員1「な、何してる!?」
764: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 21:50:16.84 ID:ymR8HEsBO
『3』
『2』
765: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 21:51:35.58 ID:ymR8HEsBO
天井のガス式スプリンクラーから消火用のガスが部屋中に放出される。ガスが身体に振りかかるのを感じた奥山は静かに深呼吸をした。ガラス扉前の社員たちの一部はとっさに息を止めた。無呼吸でいるのは長く続かず、激しく咳き込む音がいくつもした。室内の二酸化炭素濃度が致死量に達すると、そういった音もなくなり、どさどさという成人男性の体重が床にぶつかる音がガスの放出音にまぎれてかすかに鳴ったが、その音を耳にする者はひとりもいなかった。
ガスの放出がおわり、室内の二酸化炭素濃度を通常に戻すため空調が働き始める。
766: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 21:55:38.55 ID:ymR8HEsBO
ビル前に停められたバンのなかで田中は奥山からの報告を待っていた。荷台に座り込んだ田中はスマートフォンを左手に持ち、連絡がくるのを待ちわび焦れたように画面を凝視していた。連絡がまだきてないとわかりポケットにしまってからもスマートフォンを握りしめたままだった。右手は荷台に置かれたショットガンのグリップに置かれ、すこしだけ力をいれて押さえつけている。荷台に張られた車内カーペットの上にショットガンを置いたとき、固さと重さを持った音がかすかに、合成繊維では吸収できなかった分だけ田中の耳に届き、その音のため田中の右手は銃を押さえつけていた。
田中がふたたびスマートフォンをポケットから取り出し、画面を見つめていると高橋が眼前で小瓶を振った。
767: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 21:56:55.98 ID:ymR8HEsBO
田中「あれから射撃はさんざん練習したんだ」
768: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 21:58:30.91 ID:ymR8HEsBO
田中「行くぞ!」
769: ◆8zklXZsAwY[seko]
2019/01/26(土) 22:00:06.82 ID:ymR8HEsBO
シャッターは下りなかった。警備システムはすでに奥山が掌握していて、すべてを操ることができた。
ボタンを押した警備員の頭蓋骨が散弾で吹っ飛ばされた。衝撃によって警備員は顔面から壁にぶつかり鼻骨が折れたが、彼はもう痛みを感じることはなかった。糸の切れた操人形のように警備員の膝がくにゃりと折れ、床に倒れた。
770: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:01:26.41 ID:ymR8HEsBO
『エレベーターは使わないでよ。物理的に塞がれたら詰むから』
インカムから奥山が注意をした。
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20