74: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/28(土) 23:15:41.32 ID:8ENUCYV1O
美波は黙ったまま話を聞いていた。美波と対面するかたちでプロデューサーはソファに腰掛けていた。目の前の美波は顔をあげ、プロデューサーと視線を交えている。そこにあるのは綱引きのような緊張関係だった。美波はプロデューサーの協力を求めていたが、無条件になんでも受け入れることはできなかった。自分の意志が最大限に尊重されることが前提で、それが認められないなら別の人間に助けを求める意志があること彼女の眼は語っていた。美波の視線が鋭さと潤みを増すのを見てとりながら、プロデューサーは話を先にすすめた。
武内P「いちど拡散された情報は回収ができないどころか、恣意的な編集によって情報が歪められる恐れがあります。悪意をもってそう意図するわけではなく、ただ単に放送しやすくするためという理由でおこなわれた編集でもそういったことは起こりえるのです。すべてのメディアが内容にも配慮するという保証はありません。映像それ自体に重きを置いた加工がなされても、それは報道する側の自由なんです」
75: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/28(土) 23:16:57.32 ID:8ENUCYV1O
美波「プロデューサーさんのおっしゃることはよくわかったつもりです。わたしの心配をしてくれていることも、いまの状況について冷静な意見をおっしゃてくれたこともわかっています。でも、わたしにとって、問題は圭がどう受け止めるかってことなんです。警察や政府の人たちが圭を追って、一般の人たちも大騒ぎしているとき、安全が保証されるから政府に保護されるべきだとニュースで報道されたとしても、それを信じるでしょうか?」
武内P「新田さんのおっしゃることなら信じてくれる、と?」
76: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/28(土) 23:18:15.03 ID:8ENUCYV1O
武内P「私は、あなたのプロデューサーとして意見を述べたにすぎません。あなたが私の意見を聞き、そのうえで会見に出ると決断されたのなら、私はあなたを全力でサポートします。それが私の仕事です」
美波は鼻を啜り、とめていた呼吸を再開したかのように息を吐いた。潤みに満ちた声で、ありがとうございます、と礼を述べた美波に、プロデューサーはこう応えた。
77: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/28(土) 23:19:37.02 ID:8ENUCYV1O
応接室に姿を現したのはハンチング帽をかぶった初老の男だった。年齢は今西と同程度だったが、体躯を支えるしっかりとした筋肉がそなわっていて、一七三センチ程度の年齢からしてはかなりの背丈をしていた。帽子の下からは白髪がのぞいていて、半袖のシャツの裾をサスペンダー付きのズボンのなかに入れている。その男はナイフでいれた切れ目のような細い目をしていた。穏やかな表情をしているのに、目の奥がまったくうかがえない。
「あなたが新田美波さん? 永井圭くんのお姉さんの」
78: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/28(土) 23:21:34.41 ID:8ENUCYV1O
めずらしく威圧感を発し、おいかえそうとするプロデューサーを帽子の男はやんわりと制した。帽子の男は背をそらし視界を遮っているプロデューサーの身体をよけた。そして美波をみて、言った。
「私は亜人の市民権獲得をめざす団体の一員です。ここへは亜人の権利を守る活動の一環としてきました」
79: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/28(土) 23:25:49.12 ID:8ENUCYV1O
今日はここまで。仕事が忙しかったり、書きためが消えたりして(そんなに量はなかったですが)、更新がだいぶ遅れてしまいました。もともと遅筆なので2週間に1回更新できればといいほうだと、どうか大目にみてください。
わりと余談なんですが、ベトナム戦争ではフェニックス作戦という秘密作戦が展開されてたそうで、内容をみるかぎり、佐藤さんは確実にこの作戦に従事してたなあ、と思います。
80:名無しNIPPER[sage]
2017/01/28(土) 23:43:25.31 ID:bkOHTD770
おつ
原作では妹が一時的に誘拐されてたけどこっちではどうなるか
あとデレマスsideの亜人が気になる
81:名無しNIPPER[sage]
2017/02/05(日) 00:59:21.78 ID:8FkjhZrYo
フェニックス計画はsogでも不良が回されたそうだし、team単位での精鋭で出来た集団故にチームと呼ばれてたのを考えると、司令部直轄の秘密コマンドだろうと思う。 そういうコマンドはあったと聞くし
82: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/02/12(日) 22:46:00.70 ID:nOJuozZtO
3.サービスにするのもいいかもね
完全に黒い物体ならばどんなに鋭敏な視覚でも捕えることができないし、見ることができない、と彼は主張した。
83: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/02/12(日) 22:47:59.19 ID:nOJuozZtO
美波「それはいったいどういうことなんですか?」
美波は押し込めていた感情に突き飛ばされたかのように身を乗り出し、佐藤の言葉にたいして過敏に反応した。佐藤が美波をほうをむいた。帽子の影が額にかかり、佐藤の細い眼は光があたっている部分と影とのちょうど境界線にあたるところにあった。
84: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/02/12(日) 22:50:07.94 ID:nOJuozZtO
佐藤「亜人が死んだ回数を測定する方法をご存知ですか? 亜人に痛みを与え、そのときの脳の反応を見ることでその亜人が何回死んだか予測することができるんです。亜人研究は、亜人であった者に苦痛を与えることが前提になっているのです」
美波「でも、亜人管理委員会の方は亜人狩りの危険から守るためだって……」
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