新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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132: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:22:31.58 ID:4YLo7u+WO

下村の幽霊の右手の手首から先も同様になくなっていて、そこから物質の崩壊が観察できた。


下村 (相殺……!? なら、打撃が……有効……!?)
以下略 AAS



133: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:23:17.19 ID:4YLo7u+WO

田中「あら? 途切れた!」


病院前のベンチに座っていた田中が叫んだ。目の覆いを外し、拳を握ってベンチを殴りつける。田中のいらだちに反応する者は周囲に誰もおらず、蝉が鳴き喚くほかには目の前の道路を二三台、車が通り過ぎていくだけだった。しばらくして、いらだたしさをおさめたあと、田中は下唇を指で引っ張りながら考え込み、さきほどの戦闘について振り返った。
以下略 AAS



134: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:24:40.63 ID:4YLo7u+WO

病室で、自律を失った田中の幽霊を見下ろしながら、下村が息をついた。


下村「ふぅ……」
以下略 AAS



135: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:26:01.79 ID:4YLo7u+WO

下村は視線を前方に戻した。ベットの上に窪みが見えた。その窪みの上にいたはずの慧理子はいなかった。


下村「! くっ、そ……!」
以下略 AAS



136: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:26:51.69 ID:4YLo7u+WO

病院のベットの上で目覚めるというのは美波にとって初めての体験で、天井の灯りをまともに見てしまった。眼が光線を受け止めた瞬間、反射的に瞼を閉じると左のこめかみに痛みが走った。かなりの疼痛で声を出すのも躊躇われた。美波はしばらく目を閉じたままにして、痛みが落ち着いてからゆっくり瞼を開けてみたが、眼に見える光景には見覚えがなく、視覚が機能していてもそれが認識に結びつかなかった。眼が覚めた瞬間、自分のいる場所に見覚えがまったくないと人はとてつもなく不安になり、危険とさえ思えてくる。美波もそうだった。視界が焦点を結び像を描く、白くのっぺりした天井とシルバーに光っているポールタイプのカーテンレールと薄いライトグリーンをしたカーテンの上部が見えて、病院の診療室めいてみえたが実際に診療室だった。

眩しくて眼を光から避けようと視線を下げると薄いライトグリーンで視野いっぱいになった。じゅわじゅわと浸透するように居残る痛みを揉みほぐしたかったが手を顔まで持ってくるのが億劫で、美波はしかめた表情を作るときみたいに顔の筋肉を動かしてその代わりにしようとした。



137: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:27:47.10 ID:4YLo7u+WO


下村「あっ、すみません、だれか」


以下略 AAS



138: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:28:31.52 ID:4YLo7u+WO

美波は妹の姿を求めて首を大きく動かした。カーテンの向こうを透視しようとするかのように目を強く細めている。


下村「山梨との県境のあたりで発見されました。救急車で近くの病院に搬送されて、いまは状態も安定しています」
以下略 AAS



139: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:29:23.82 ID:4YLo7u+WO

下村「新田さん、お体は大丈夫ですか?」


下村の確認に美波は頷いて答えようとした。ベットの隣に座っているだろう下村に目を向けてみると、下村は黒いスーツと白いシャツという格好ではなく、カジュアルで安っぽい半袖のチェックのシャツを着ていた。
以下略 AAS



140: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:30:21.06 ID:4YLo7u+WO

下村は不思議そうに美波に問い返してきた。その態度が自然なものか装われたものか、美波には判断できなかった。後者だと思うのだが、自信がない。病室で下村に起きたことは鮮明に記憶しているが、その鮮明さ故に間違った記憶ではないのかと不安になってくる。記憶のなかにいる死んだ下村と、いま美波の目の前にすわっている下村はその実在感において、ほとんど遜色がなかった。間違い探しをしているようなものだが、二つの光景は似ても似つかない。ただリアリティにおいて、記憶は現実と同じレベルの強度を持っていた。

診療時間を過ぎた院内は、静かで寂しげだった。ときおり通路に移動する看護師の足音が聞こえるくらいで、患者たちはおとなしく、医療機器は無機質な音を出している。時刻は午後五時半をまわり、病室での出来事から三時間が経過していた。

以下略 AAS



141: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:31:25.58 ID:4YLo7u+WO

下村「事件に関するあらゆる情報に亜人管理法が適用され、マスコミ等第三者に口外することは禁止されます。もし口外すれば刑事罰の対象になる可能性も発生します」

美波「慧理子を誘拐した犯人は亜人だっていうんですか?」

以下略 AAS



142: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/08(土) 21:32:30.30 ID:4YLo7u+WO

美波は身体をベットの上に起こしたまま黙り切っていた。美波は下村の送迎の提案もすげなく断ると、さっきからシーツを強く掴んでいる自分の手に視線を落とした。


下村「では、あなたのプロデューサーに迎えに来るよう連絡します。いいですね?」
以下略 AAS



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