勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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327:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:33:17.65 ID:AsT68X2i0
328:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:33:54.06 ID:AsT68X2i0
勇者「なん…だと…?」
大魔王「俺達のような呪われた命が世界と折り合いをつけて生きていくためには、無秩序な繁殖を抑え、個体数を適正に管理することが必須だ。無論、食事に関してもある程度の縛りを設ける必要がある」
大魔王「しかしこれは生存本能に意思の力で無理やり蓋をするようなものだ。叶うのは、俺や試験都市フィルストに居住している者共のような、一部の知性が高い種族に限られるだろう。いわんや、あの無秩序な獣共にそのような我慢が出来るはずもない」
329:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:34:30.03 ID:AsT68X2i0
大魔王「『異空間魔術』と、俺はそう呼んでいる。どうも俺の一族はこの手の術に長けていてな。お前達の世界と魔界を繋げられたのもこの能力があった故だ。今のように離れた空間を繋ぐトンネルを設けたりと、用途は様々よ」
ゆっくりと立ち上がった大魔王の周囲に、次々と暗闇が生まれ始めた。
その中には、奥に明らかに大魔王城とは違う野外の景色が見て取れるものもある。
勇者は講釈する大魔王に構わず、戦士に駆け寄った。
330:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:35:10.40 ID:AsT68X2i0
勇者達が魔王の討伐に成功した時は、『宝術』という切り札を用いていた。
宝術の影響下では、魔物の力は半減し、逆にこちらの力は倍増する。
故に、武の国兵士長を始めとした魔王討伐隊は、さしたる困難も無く魔王討伐に成功したと聞く。
だが、勇者の父は―――『伝説の勇者』は違う。
331:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:35:55.90 ID:AsT68X2i0
魔王との戦いは熾烈を極めた。
宝術の加護の無い、全くの実力同士でのぶつかり合い。
躱しても躱しても追尾してくる魔王の漆黒の炎を相殺するため、勇者もまたその指先から真っ赤な炎を生み出し、魔王の炎にぶつける。
魔王「隙ありだ!!」
332:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:36:24.13 ID:AsT68X2i0
ぎり、とその顔に焦りを浮かべて魔王は奥歯を噛みしめる。
魔王「大したものだ……宝術とやらに頼らなければ獣王にすら勝てぬ程度の実力と踏んでいたが……」
戦士「魔王よ。お前は確かに速い。確かに強い。お前は確かに、私達が戦ってきた魔物の中でも一番強いのだろう。まさしく、魔王という名が相応しい」
333:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:37:20.50 ID:AsT68X2i0
勇者「勝った……」
魔王の息の根が完全に止まっているのを確認して、勇者は呆然と呟いた。
ふと気が付くと、戦士が勇者のすぐ隣まで歩み寄って来ていた。
そしてそのまま、二人はお互いの体を抱きしめあう。
334:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:38:03.32 ID:AsT68X2i0
戦士「どうする? このまま先に進んでみるか?」
勇者「そうだな。大魔王の奴がどこに行ったのか、現時点じゃ判断しようがない。ここが最奥だと思っていたけど、もしかしたら先に進む道がどこかにあるかもしれない」
335:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:38:56.78 ID:AsT68X2i0
勇者「大魔王の奴は、魔王を人造生命体と言っていた。ということは、それを造る工房のようなものがあるはずだ。少なくとも、そこだけは今回破壊してしまいたい」
戦士「そうだな。魔王の『在庫』なんてものを次々造られたら冗談じゃないしな」
336:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:39:44.87 ID:AsT68X2i0
ギイイィィィ――――――と殊更に音を響かせて、大魔王の間の扉が開かれた。
337:名無しNIPPER[saga]
2016/08/06(土) 16:41:16.23 ID:AsT68X2i0
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