5:名無しNIPPER[saga]
2022/01/18(火) 22:40:28.31 ID:pAViFCvW0
彼は自分の戦友であるチョコボの名を呼ぶ。
弱り切った彼の腕は、チチリの顎を愛おしそうに撫であげ、「くぇくぇ」とチチリは嬉しそうに鳴いた。
彼はもう一度目を瞑る。
6:名無しNIPPER[saga]
2022/01/18(火) 22:41:04.97 ID:pAViFCvW0
タン、タン、タン、タン。
チョコボのチチリの駆ける音が、規則正しく耳に聞こえてくる。
上下に揺れる視界は、戦渦でボロボロになった街並みを映し出す。
7:名無しNIPPER[saga]
2022/01/18(火) 22:41:50.72 ID:pAViFCvW0
「あいつは……エースは」
目の前が暗くなっていく。
彼がぼやける視界で最後に見たのは、懇願するように見つめる、チチリの大きな目だった。
8:名無しNIPPER[saga]
2022/01/18(火) 22:44:02.06 ID:pAViFCvW0
自分の背後では、足音が二つ聞こえる。兵隊の足音だ。
「チチリ!」
9:名無しNIPPER[saga]
2022/01/18(火) 22:45:06.84 ID:pAViFCvW0
だれか自分を見つけてくれ。
その一心で放った、泣き声のような雄たけびは、魔法の炎によって迎えられた。
瞬く間に広がる炎は、白虎兵のみを綺麗に焼き払う。
10:名無しNIPPER[saga]
2022/01/18(火) 22:45:45.63 ID:pAViFCvW0
エースは彼に回復魔法を使った。
彼のものとは違い、魔法は途中で消滅せずに彼の体を包み込む。しかし、傷つきすぎた彼の体には、もはや効果はなかった。
エースの横を生真面目そうな眼付きの強い女が通り過ぎる。彼女もまた、赤いマントを羽織っていた。
11:名無しNIPPER[saga]
2022/01/18(火) 22:46:13.63 ID:pAViFCvW0
「マキナの名づけは、わかんないなあ」
◇
12:名無しNIPPER[saga]
2022/01/18(火) 22:46:45.98 ID:pAViFCvW0
彼は清算を続ける。今までの自分の人生。してきたこと。大切な人たち。
思い出をぐるりぐるりと頭の中で回す。その滑車を回せば回すほど、自分が幸せになれると盲信しようとし続ける。
「うっ」
13:名無しNIPPER
2022/01/18(火) 22:47:14.12 ID:pAViFCvW0
おしまい
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