FF零式「開戦運命の三時間」
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10:名無しNIPPER[saga]
2022/01/18(火) 22:45:45.63 ID:pAViFCvW0

エースは彼に回復魔法を使った。
彼のものとは違い、魔法は途中で消滅せずに彼の体を包み込む。しかし、傷つきすぎた彼の体には、もはや効果はなかった。

エースの横を生真面目そうな眼付きの強い女が通り過ぎる。彼女もまた、赤いマントを羽織っていた。

「もう、無理ですね」
「わかってる」

悔しさを滲ませながら、エースは答えた。
エースはゆっくりと立ち上がる。

そうして、赤いマントの特待生は、次の戦場へと向かった。

若い朱雀兵は、薄れゆく視界の中、一組の男女を見つめる。
あとに残されたのは、若い朱雀兵と、彼の愛するチョコボ――チチリだけだった。

「来てくれて、ありがとな……チチリ」
「くえ」

チチリは彼の声に鳴き声で答える。銃弾に倒れ伏したチチリの鳴き声は、とてもか細く、小さかった。

「少し……休もう」

ぱちぱちと街の燃える音が聞こえる。
彼はあたたかなチチリの羽毛を感じながら、喋り始めた。

「お前の名前、さ」

彼は喋る、喋る。油断すると、泣き声のような声が混じってしまう。
それを抑えて、彼は笑いながらチチリに語り掛ける。

「やっぱり、変だよ、チチリ。ははっ」

弱り切った様子のチチリは、それでも愛情の籠った「くえ」という相槌返す。
彼はまた笑った。


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