FF零式「開戦運命の三時間」
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12:名無しNIPPER[saga]
2022/01/18(火) 22:46:45.98 ID:pAViFCvW0

彼は清算を続ける。今までの自分の人生。してきたこと。大切な人たち。
思い出をぐるりぐるりと頭の中で回す。その滑車を回せば回すほど、自分が幸せになれると盲信しようとし続ける。

「うっ」

鋭い痛みが自分の体を駆け巡る。
信じられないほどの苦痛だった。

甘い思い出の逃避は、鋭い痛みによって引き戻される。
彼が再び目を開けば、ぼやけた視界に、清算な戦争の光景が映った。

「いやだあ」

――街が燃えている。

「こわい」

死体の焼ける臭いが鼻を衝く。

「嫌だ。死にたくない」

途切れ途切れに放たれる彼の声は、嗚咽交じりのものだった。
いやだいやだ、と彼は泣く。まだ死にたくないと、誰にも届かぬ懇願をする。

彼は耐えきれなくて泣き始めた。
プライドや、残してきた人のことや、その他のことなどはなにも頭になかった。
怖い、怖い。彼の頭の中にあるのは、ただ死への恐怖一色。それだけだった。

情けなく泣き続ける彼の声を聴いて、チチリが頭を持ち上げる。
そして彼の泣き声に共鳴するかのようにいなないた。




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