【ウマ娘】小さなトレーナーと白い奇跡【みどりのマキバオー 】
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:52:26.00 ID:H/R4DuwY0
「なにボサッとしてんだよ。走るんだろ? 一緒に走るなら邪魔にはならないよな。ゴルシ様が併せに付き合ってやるんだから感謝しろよ。あと、やべーと判断したらすぐ止めるからな」
「ゴールドシップ……」
「なぁ、お友達も一緒に走るのは構わねーけどよ。もう時計測っちまって良いのか?」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:53:19.11 ID:H/R4DuwY0
昼休みにもなると、トレセン学園内の学食はウマ娘たちで大いに賑わう。自動車並みのスピードで走る彼女たちにとってエネルギーの補給という意味でも食事も立派なトレーニングの一環である。また、年頃の女子ということもあり、大半の生徒たちは学友、ライバルたちと会話に花を咲かせるのだ。
ただし、一部例外もいる。一人黙々と食事に徹したいと思うものもいれば、人付き合いが得意ではなく基本的に一人が好きというものもいる。エベレストのように聳え立つ白米とおかずを瞬く間に食べ終え、おかわりへ向かっているオグリキャップや隅っこで身を竦めるように食事をしているライスシャワー。気恥ずかしそうにウィニングチケットとビワハヤヒデから少しだけ離れた場所に座っているナリタタイシン等がその部類だ。
復学してからはマックイーンも周りを避けるように一人で食事をしていた。最初のうちは多くのウマ娘が心配して話しかけてきていたが、近寄り難い雰囲気を放っているマックイーンに萎縮して今ではその頻度は減っていた。しかし、今日はいつもと違っていた。
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:54:06.18 ID:H/R4DuwY0
「マックイーンさん、これ……食べてください! スピカのみんなはマックイーンさんのこと、いつまでも待っていますから!」
スペシャルウィークはそう言うと、マックイーンのテーブルに大きな段ボールを置いて去って行った。箱の中身は大量のニンジン。次にやって来たのはメジロドーベルとメジロライアン。マックイーンと同様、メジロ家のウマ娘である。
「みんなマックイーンのこと心配してるからさ……辛かったらいつでも戻って来なよ」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:55:04.85 ID:H/R4DuwY0
「よ、よぉ、マックイーン」
「聞いたわよ。精神的なストレスで幻覚が見えているんですって?」
「ちょっ、ちょっとなんなんですの? 一体誰がそんなことを」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:55:45.06 ID:H/R4DuwY0
「それにしても、随分な言いがかりですわ。わたくしが錯乱しているだなんて。ネズミさんを幻覚だなんて……」
「マックイーン!」
返却口で独り言を呟いたマックイーンに対して大声で話しかけきたウマ娘が一人。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:58:34.44 ID:H/R4DuwY0
その日の放課後も、マックイーンは旧校舎にてトレーニングを行っていた。未だに足には時折激痛が走り、幾度と無く足を止めてしまう。その度にもう全盛期のようには走れないという現実を直視させられる。その絶望感を振り切るようにマックイーンは再度走り込みを行う。ただがむしゃらにその繰り返し。まるで、出口の見えないトンネルを進んでいるような感覚に陥っていた。
「おーい、たれ子! どうした! もうやめちまうのか!? お前さんの覚悟ってのはそんなもんか!?」
小さい体からは想像もつかないほど大きな檄が飛ぶ。極秘トレーニングの間、ネズミは片時も離れず懸命にマックイーンを支えていた。足の痛みと共に湧き上がる焦りや不安は、その声を聞くと不思議と和らいだ。ネズミの声から伝わってくる自信や安心感はまるで熟練のトレーナーそのもの。その声援に背中を押される度に幾度と無く救われてきた。自分は決して一人ではないと奮い立つことが出来た。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:59:11.98 ID:H/R4DuwY0
白い毛並みが走る姿を遠くから眺めている。
それがとても誇らしく、同時にとてもつらい。
懸命に走るマックイーンの姿に、大事な誰かを重ねていることだけは自分でもわかる。しかし、それが誰なのかまでは思い出せない。ただ直感でわかることは全てを思い出したその時、自分はもうここには居られないだろう。何となくだが、ネズミはそんな予感がしていた。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:00:13.48 ID:OS/CCdyu0
「俺はな。ここに来る前は多分お前と同じくレースに関わっていたんだと思う。まだ記憶はおぼろげなんだが、どうも体は覚えているみてぇなんだよ。お前の走る姿を見ていると居ても立っても居られないっつーか、ふつふつと湧き上がる熱いものを感じるっつーかよ。お前の言う通り、俺はお前の走る姿に誰かを重ねているらしい。そいつのことを未だに思い出せないってのが心苦しいがな」
「その方はわたくしに似ていますの?」
「いや、多分お前とは真逆だな。ブサイクで、お前さんほど品も良くねぇし、どうしようもねぇくらいドンくさい奴だった気がする。でもそいつはお前に負けないくらいすげー根性の持ち主だった。居並ぶ強豪に囲まれても一歩も退くことなく、色んな奴らの想いをその小さな体に背負って緑の上を懸命に走っていた。それを俺はすぐ近くで見ていた。そう、丁度お前の頭の上に乗っている今みてーにな」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:01:19.89 ID:OS/CCdyu0
ネズミを頭の上に乗せたまま、マックイーンが再びスタート位置についたところで二人分の大声が響く。ネズミにとっては初めて見るウマ娘だが、マックイーンには昼休みぶり。声の主はダイワスカーレットとウオッカだった。
「あなたたち。どうしてここが?」
「ゴールドシップからよ」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:02:48.94 ID:OS/CCdyu0
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:03:43.93 ID:OS/CCdyu0
一方的な条件を提出してきた二人のチームメイト。随分と乱暴な物言いに聞こえるかも知れない。しかし、マックイーンはその言葉の裏にある二人の優しさ、そして真意をしかと理解していた。
もしも二人がマックイーンの体のことだけを心配していたのであれば、条件提示などせずにトレーナーかメジロ家に密告すれば良い。しかし、二人はそれをせずに勝負という形に持っていったのはマックイーンの気持ちが痛いほど理解出来るからこそ。ならばこそ、そこにもはや言葉は不要。走りで語るのみ。ウマ娘らしくレースで引導を渡すのがせめてもの情けであると考えたからである。また、1600mのマイル距離はダイワスカーレット、ウオッカの脚質に適している。つまり、ライバルとして本気でぶつかるという覚悟と意思の表れであると共にマックイーンの足への負担を考え、敢えてそう長くない距離を選んだのだ。
「ふふっ、本当にわたくしは幸せものですわね。こんなにも想ってくれる仲間に囲まれているんですもの」
以下略
AAS
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