【ウマ娘】小さなトレーナーと白い奇跡【みどりのマキバオー 】
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:36:20.55 ID:H/R4DuwY0
木漏れ日の差し込む窓辺。吹き込んだ風がカーテンを優しく揺らしている。キャンバスを前に座っている少女の芦毛の髪と尻尾もまた同様にそよいでいた。
「せめて気を紛らわせるために筆を執ってはみたものの、やっぱり慣れませんわね。早く慣れないといけませんのに……」
呟いた独り言さえうるさく感じてしまうほど静かな朝。頭の上にある少女の耳は、小鳥の囀りを捉えてぴこぴこと動いていた。この療養所では学園のような喧騒は聞こえない。友の笑い声も、蹄鉄が大地を蹴る音も。少女は何気なく自分の右耳をそっと右手で触れた。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:37:58.97 ID:H/R4DuwY0
「なんて顔してやがるんだよ、イイ女が台無しじゃねぇか」
「だっ、誰ですの?!」
不意に聞こえた声に少女は驚いて顔を上げる。すると、半分開いた窓に小さい何かが立っていた。少女は、メジロマックイーンはその何かに見覚えがあった。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:38:49.72 ID:H/R4DuwY0
「えぇ、構いませんわ。あなたには昨日の御恩もありますから」
快諾を得たネズミはキャンバスから一足飛びでテーブルへと移動すると、自分の体より大きなリンゴをひょいと持ち上げた。
「へへっ、ありがとよ。そういや、昨日はなんであんなところに一人で歩いて来たんだ? 見たところ足を怪我しているみてぇじゃねぇか。昨日も左足庇いながら歩いていたよな?」
以下略
AAS
18
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:39:37.34 ID:H/R4DuwY0
ぽたり、ぽたり。
少女の瞳から大粒の雫が零れ落ちた。
「その普通の生き方が……死ぬよりも辛いんです……」
以下略
AAS
19
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:43:11.65 ID:H/R4DuwY0
>>18
声をころすように、がの部分にNGが入っているみたいですね……
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:44:30.95 ID:H/R4DuwY0
「走りてーのか?」
「えっ?」
「本当に走りたいのかって聞いてんだよ。未来を蹴ってまで今を走る覚悟があんたにはあるのか?」
以下略
AAS
21
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:45:52.92 ID:H/R4DuwY0
翌日、マックイーンは療養所から久しぶりにトレセン学園へと戻った。理由は二つある。一つは学生としての本分を全うするため。もう一つは、二度と叶わないと諦めかけていた夢への再起を図るため。学園以外での生活では、常に使用人たちの監視の目がある。隠れてトレーニングなどして見つかった日には、メジロ家の当主たる厳格な祖母からどんな叱責を受けるかわかったものではない。その為、マックイーンは祖母や使用人には「これからは勉学に励む」と嘘を吐いてきた。
しかし、学園関係者たちにもマックイーンを走らせてはならない≠ニメジロ家のからの通達が来ているはずである。それはおそらく、トレーナーやチームメイトにも。
だからこそ、マックイーンは強い覚悟を持って学園へと戻ってきた。今日からは誰とも関わらない。ただ一人で、誰にも知られることなく自己研鑽を積むこと。ここからは孤独な戦いが始まる。相手は足の痛みと自分自身。そして、その先に待つ彼女との約束のために。
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:46:40.38 ID:H/R4DuwY0
「ほー、随分と立派な学校じゃねーか。名家のお嬢様は伊達じゃないってわけだな、たれ子」
鞄の中からひょっこり顔を覗かせたネズミは、物珍しそうに辺りをキョロキョロと見渡している。その様子を見て、正確に言えば自分は一人ではないということを思い出した。
「誰かに見つかると厄介ですわ。学園に着いてくるのは構いませんが、せめて大人しく身を隠していてくださいまし。あと、たれ子はやめてくださいます?」
以下略
AAS
23
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:47:57.25 ID:H/R4DuwY0
久しぶりに登校してきた最強のステイヤーと呼ばれるマックイーンが、校門付近で鞄に向かって声を荒げて話しかけている。何とも奇怪な光景だろうか。そんなマックイーンの背後から二人のウマ娘が嬉々としてやってきた。
「わぁー! おはようございますマックイーンさん!」
「ずっと学校来ねーから心配してたぜー!」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:48:41.15 ID:H/R4DuwY0
放課後、ジャージに着替えたマックイーンは登山用の大きなリュックを背負ってある場所へと向かった。そこは、今は使われていないトレセン学園の旧校舎。外観は廃校のように寂れてはいるが電気や水はまだ使える状態で残されている。それ故に多少古いがシャワー室やトイレなども使用可能。有事の際に緊急避難所として利用出来ると噂されてはいるが、真偽は一般生徒の与り知るところではない。トラックはきちんと整備されており、まだ比較的新しい蹄跡も残っていることからつい最近まで誰かが練習でこの場所を使用していたことが伺えた。
マックイーンはグラウンドの端にテントを設置してトレーニングシューズに履き替えた。しばらくの間ここが一人と一匹の拠点となる。
「さぁ、始めましょう。タイムをお願いしますわ」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:49:59.91 ID:H/R4DuwY0
翌日、普段通り登校し授業に出席したマックイーンは放課後再び旧校舎へと向かった。誰とも接さず、関わらず。チームメンバーやトレーナーにさえもその真意を話してはいない。話せば確実に止められてしまう。最悪の場合、メジロ家に連れ戻され籠の中の鳥のように過ごさなくてはならないかも知れない。あるいは、家督を継ぐ跡取りの為の縁談を持ちかけられるかも知れない。いずれにせよ、今はまだそのどれも望んではいない。あるのはただ、あの日の約束を果たすという使命感。そして、勝ちたいというウマ娘の本能。それに従うべく、マックイーンは今日もジャージに着替えてトレーニングシューズを履く。
「今日は昨日より少しペースを上げていきますわ。ネズミさん、またタイムをお願いします」
「ちょいと待ちな。客が訪ねて来たみたいだぜ」
以下略
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