【ウマ娘】小さなトレーナーと白い奇跡【みどりのマキバオー 】
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15: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:36:20.55 ID:H/R4DuwY0
 木漏れ日の差し込む窓辺。吹き込んだ風がカーテンを優しく揺らしている。キャンバスを前に座っている少女の芦毛の髪と尻尾もまた同様にそよいでいた。

「せめて気を紛らわせるために筆を執ってはみたものの、やっぱり慣れませんわね。早く慣れないといけませんのに……」

 呟いた独り言さえうるさく感じてしまうほど静かな朝。頭の上にある少女の耳は、小鳥の囀りを捉えてぴこぴこと動いていた。この療養所では学園のような喧騒は聞こえない。友の笑い声も、蹄鉄が大地を蹴る音も。少女は何気なく自分の右耳をそっと右手で触れた。

「あぁ、そうでしたわ」

 普段から身に付けていたリボンは昨日紛失してしまった。いつもそこにあるものがないという感覚は、慣れるまでが苦労する。いつしか忘れ、それが無いことが当たり前になるまでが。

「…………」

 たかがリボン一つ。替えなんていくらでも利く。しかし少女は、その失くしたリボンに掛け替えのない自分の夢を重ねていた。俯きながら少女はそっと自分の左足を摩った。


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