3:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:00:44.90 ID:emsexCaj0
トレーナーがせっせと祝勝会の準備を進めるのを眺めながら、
タキオンはトレーナーにちょっかいを出しつつ、はやくしろとせっついた。それにトレーナーが、はいはいと応える。
場所はトレーナーの部屋。
タキオンはちょっかいを出すのにも飽きて、暇になり、
4:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:02:20.73 ID:emsexCaj0
始まった二人だけの祝勝会の中、トレーナーは機嫌よく今後の展望について話した。
次々と有名どころのレースの名を口に出し、それぞれでタキオンが一着をとる姿を想像してニヤニヤとほくそ笑む。
しまいには、タキオンは日本一、いや世界一、いやいや史上最強のウマ娘になれると嬉しそうに話すのを、
タキオンは、酒も飲まずによく酔えるものだと茶化しながら、黙って聞いていた。
5:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:04:03.32 ID:emsexCaj0
今までのタキオンは誰かに頼ることが無かった。
基本的に、自分一人でどうにかできた。
自分の力を何より信じていたし、それが一番の近道だと考えている。
誰かと協調し、不確定要素が増え、それで足並みを乱されるより、
6:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:05:54.83 ID:emsexCaj0
この数年間、たくさんのことを発見した。
知らない自分を見つけた。
誰も見つけてくれなかった自分を、トレーナーは見つけてくれた。
トレーナーが一緒にいてくれたから、今の自分がここにいる。
7:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:07:24.59 ID:emsexCaj0
「新しいトレーナーは教え方が上手いようでね。今のところ順調だよ」
病室に備え付けのパイプ椅子に座って、
慣れた手つきで林檎の皮をむきながら、タキオンが言う。
つくづく月並みな見舞品だとは思うが、月並み以外のやり方を知らない。
8:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:09:40.61 ID:emsexCaj0
祝勝会は、タキオンの門限が来る前にお開きになった。
タキオンは、今日はもう少し、トレーナーと一緒にいたいような気がしたが、それを口に出すことは無かった。
トレーナーが後片づけをするのを見守っていると、トレーナーが、名残惜しそうな顔をあからさまにしているので、
タキオンは吹き出しそうになった。
9:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:12:02.34 ID:emsexCaj0
「君は私が来るたびに心配事を言う」
タキオンは病室に来ると、だいたい近況について話す。
そうすると、トレーナーはいつも、タキオンが真面目に練習をしているか、
新しいトレーナーの言うことをちゃんと聞いているか、確認してくる。
10:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:13:28.82 ID:emsexCaj0
その日の学園内は、少し騒ぎになった。
朝早くから、不安になるようなサイレンを鳴らしながら救急車が敷地内に入り、
朝練をしていたウマ娘たちも何事かと様子を見に行っていた。
教師がウマ娘たちを宥め、元に戻るよう告げた。
しばらく途絶えていたサイレンの音が再開し、敷地内を出て、遠ざかっていく。
11:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:16:27.46 ID:emsexCaj0
手に温もりを感じていた。
トレーナーが目を開けようとすると、すぐにその温もりは離れていった。
外界から声が届いてくる。やっとの思いで、それに返事をしながら、目を開けると、
目の前に、こちらを覗き込むタキオンの顔があった。
12:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:18:15.71 ID:emsexCaj0
トレーナーの症状は深刻だった。
意識は取り戻したものの、いつ容態が急変してもおかしくない。
今も意識を失ったり、また取り戻したりを繰り返している。
薬を投与し続けて、やっとのことで症状を緩和できている状態だ。
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