【ウマ娘】タキオンのトレーナー、死す
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11:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:16:27.46 ID:emsexCaj0
手に温もりを感じていた。
トレーナーが目を開けようとすると、すぐにその温もりは離れていった。
外界から声が届いてくる。やっとの思いで、それに返事をしながら、目を開けると、
目の前に、こちらを覗き込むタキオンの顔があった。

なんだか、とても真剣な顔をしているので、おかしくなって、
つい笑ってしまった。

そうしたら彼女は、目を瞬いて、すぐに顔を背けた。
ベッドの脇にあるボタンに手をかけ、何事かを呼びかける。

その様子を見て、ここは病室なのだとうっすら理解ができた。
記憶が混濁してよくわからないが、もしかしたら、いろいろ迷惑をかけたのかもしれない。
起き上がろうとして力が入らず、ふと腕を見ると、管が刺さっていた。

少し不安になって、タキオンの名前を呼ぶ。
「なんだい」と、いつもと変わらない彼女の声に、少し安心する。
もう一度彼女の名前を呼ぶと、こちらの顔を覗きに来てくれた。

いつも通りの、澄ました顔だ。

それで、もしかして、タキオンの薬を飲んじゃったのかな?と言うと、
「命の恩人に向かって、酷い言い草じゃないか?」と、呆れたように文句を言われた。
ごめんごめんと、謝っているうちに、渦巻き始めていた不安な気持ちが、薄れていく。
息をほーっと吐いて、迷惑をかけてごめんねと、また謝った。

「そう思うなら、ちゃんと安静にしてるんだね。すぐに元気になるから」

そう言って、タキオンはポンポンと、毛布の上から軽く叩いた。

その言葉にふと、優しい感じがしたので、ありがとうと、タキオンに言った。
こわばっていた力が抜けて、眠くなってきたので、目を閉じる。
タキオンが声を掛けてくる。曖昧に返事をする。

しばらく経って、そっとまた手に温もりが戻った。

…ああ、タキオンが手を握っていてくれたのか。
安心する。
少しだけ力を込めて、握り返す。

…ありがとう、タキオン。
…私のタキオンはやっぱり、優しいね。

心地よい気持ちの中、どんどんと、意識が薄らいでいく。
そのうちに、タキオンの手の温もりだけになった。

…私の自慢のウマ娘。


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