高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「『あいこカフェ』で」
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:44:37.34 ID:eE/KPeRw0
何度かテラス席と店内を十何往復することでようやく落ち着くことができた。廃棄物を抱えて建物の外周からゴミ置き場へと放り投げ、勝手口からバックヤードまで。壁に背を預けて大きく大きく息を吐く。
疲れたー……。
瞬間的に化けることは簡単でも、やり続けるのは楽じゃない。これが1日通しての撮影なら最初にスイッチみたいな物が入ったりするしやり通せるんだけど、なにせ急だったから……。ウィッグの蒸れもホントに鬱陶しい。寝室まで戻って、そういえば朝駆けで布団も畳んでいなかったことを思い出す。けっこう綿密に計画を練ってたのに、いろいろ綻んじゃったね。でも、これも楽しいからいっか♪
以下略
AAS
28
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:45:07.47 ID:eE/KPeRw0
バックヤードへ駆け込んだ藍子の姿を、お客さんも目で追っていた。午前に当たりをつけてやってきた人達は、残念ながらカフェのルールで退席済み。店内の、特に長机には空席が目立つ。
残ったラッキーな人達、あるいは正解を見つけられた人達は、スタッフさんのアナウンスに色めきだつ。くつろぎスペースでおひるねしていた人は足音で目覚め、来た時には無かった音楽器具やマイクに目を丸くしているようだった。
ひょっとしたら、告知を見ていない人だっているかもしれない。
以下略
AAS
29
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※歌としてお借りした元ネタは「トラベルナ」です、ご参考までに……。
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:46:07.36 ID:eE/KPeRw0
「〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜♪」
やがて歌が始まった。声の柔らかさがリズムを帯びて、少しずつ形を変えてゆく。
森の奥で、妖精が楽しげに歌っているような――。
そういえば、いつだったっけ。藍子のことをカフェに住む妖精とか、あるいは魔女だなんて冗談を言い合った。
以下略
AAS
30
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:47:07.37 ID:eE/KPeRw0
ライブが始まる前は表情で背を押した、ファンのみんな。藍子が歌い終わった時には、拍手と、歓声で少女を迎えた。
それは歌を通じて、この場のみんなと同じ想いを共有できたのだと知っているから。寝ていた人も、スマフォ相手に顔をしかめていた人も、話している内容がちょっとだけ愚痴になりつつあったママ友も。密かにアイドル推しが趣味で、内気で誰とも好きの気持ちを共有できずに1人で来た人だって、やんわりと包み込んであげるのは――藍子だけではなく、藍子の優しさを受け取ったファンによるものだった。
伝播していった気持ちが最後には、より引き込む力の強い場所へ。
アイドルの藍子へと戻っていって、少女の笑顔をきらめかせる。
以下略
AAS
31
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:48:06.58 ID:eE/KPeRw0
ミニライブが終わってからも、多くのお客さん、藍子のファンの人たちは席を立つことなく思い思いの時間を過ごしていた。
長く居座り続けるならそれとなく言うルール、というのはもちろん続いてるけど、新しいお客さんが来るまでは誰も追い払うことなんてしなかった。16時を回った頃からは新しいお客さんがほとんど来ず、店内でも時々思い出したかのように注文する程度で、店員役のスタッフさんは一緒になってのんびりとした時間を楽しんでいるようだった。
ときどき藍子が、ラジオ番組を真似たトークを始めてみたりする。お客さんから質問を募集して、それにのんびりと答えていく。
以下略
AAS
32
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:48:37.20 ID:eE/KPeRw0
コーヒーは眠れなくなっちゃうかもしれない。ココアにも同じ成分が入っていると聞いたことがある。ジュースを飲み干して悪い子! ……っていうのは、今やってもしょうがないよね。
考えついた結果が「白湯」という実物通り味のしない選択だった。とほほ、と肩を落とす私のことを、まあまあ、と苦笑しつつ撫でてくれた。
くっだらない意地を張ってうまくいかないのはいつまでもそう。そんな日々の失敗だって、藍子にとっては新しい思い出になるのかもしれないけどね。
「いただきます、加蓮ちゃんっ」
以下略
AAS
33
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:49:06.93 ID:eE/KPeRw0
「ねえ藍子。ここでいつもみたいにのんびり喋るのもいいけど……。いつものカフェじゃないし、いつもの店員さんもいないんだから、せっかくだしいつもじゃないことをしない?」
「いつもじゃないことって?」
「それはね――」
実はやってみたいと思うことがあった。藍子の手を取って立ち上がる。連れて行く先はカフェの向かって右側、くつろぎスペース。靴を脱いで、藍子は引っ張られながらこんな時でも私の分も含めて靴を合わせて、先に座り込んだ私の隣に腰を降ろした。
以下略
AAS
34
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:50:06.48 ID:eE/KPeRw0
「……カフェさ、明日で終わっちゃうね」
「……そうですね。ひとまず、明日で終わってしまいます」
「なんだか寂しいね」
以下略
AAS
35
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名無しNIPPER
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:50:38.81 ID:eE/KPeRw0
新しい1日を告げる鐘の音が、全身へとエネルギーを行き渡らせた。藍子も同じだったようで、私達は合図もなく、どちらかがどちらに引っ張られることもなく起き上がった。
クッションの汚れや食べ物の小破片がとても気になる。藍子も私の手を離し、長机の椅子をピッタリ並べ直しているようだった。
次は、と店内を見渡す目が、ふっと閉じる。
……頑張りたくなる気持ちは分かるけど、もう12時を過ぎちゃった。私も、すっごく眠たいや。
以下略
AAS
36
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:51:06.48 ID:eE/KPeRw0
昨日のことも考えて、3日目は裏方を止めて主にキッチンの雑用を担当することにした。ウィッグをつけなおし、変装と異物混入の阻止を兼ねた頭巾を巻く。藍子も真似しようとしたけど、看板娘に野暮ったい格好はさせられないので没収。
とは言っても……正直、私の手伝いはなくてよかったと思う。
最終日となる3日目は、『あいこカフェ』に力を貸してくれたスタッフさんが全員集まった。事務的な面を担った方も様子を見に来てくれて、周りに勧められて少しだけ店員としても入る。人手の多さもあって昨日みたいな忙しさはなく、何もないまま時間が過ぎていく。
以下略
AAS
37
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2021/05/16(日) 14:52:06.60 ID:eE/KPeRw0
藍子がまた新しい注文を完成させ、お届けする姿をぼんやり眺める。
……こうして見ると改めて、これが藍子の世界なんだって思う。
カフェとアイドル……。カフェアイドル、やっぱりやれるんじゃないかな。
以下略
AAS
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